第12話 タマオくん

「じゃあ、俺から。」

 さっき、メグちゃんの袖を引っ張っていた男の子だ。

「俺は『らんちん』のタマオ。」

 初めての聞く単語だった。

「『らんちん』って何?」

「『らんちん』知らねえのか?」

 驚かれた事に、驚いた。

「『らんちん』って言ったら…。」

 ポケットをゴソゴソし、取り出したものは、

「それ『ビー玉』じゃない。」

 綺麗なビー玉。

「この辺りじゃ『ビー玉』じゃなくて『らんちん』さ。」

「へー。」

 そう言えば、お店で売っているのは見たけど、遊び方知らないな…。

「俺は、コレが得意なんだ。」

 タマオくんはいきなりしゃがんで地面に小さな穴を掘った。そして、穴から二メートル程離れ、

「見てろよ。」

と、またしゃがんだ。

 右手の小指側を地面に付けて、

「手を地面から離したら駄目だからな。」

 親指で『らんちん』を弾く。


 『らんちん』は勢い良く飛び、数回跳ねてから転がる。そして、見事に先程開けた穴に入った。

「どうだ。上手いだろう!」

 鼻が伸びて天を突きそうなぐらい得気に言った。

「何か『ゴルフ』みたいね。」

「そ、そうだ。『ごるふ』みたいだろう。」

「嘘ばっか。タマオくん『ごるふ』知らないでしょう。」

 ウサちゃんが突っ込んだ。

「し、知ってらぁ! 『ごるふ』って言ったら…。」

 口ごもったところに、

「『ごるふ』って言ったら?」

 ウサちゃんの追い打ち。

「『ごるふ』ってのは…。」

「ってのは?」

 ウサちゃん容赦ない…。タマオくんはついに黙り込む。

「ウサちゃん。タマオくんが可愛そうだよ。」

 ケンちゃんが入ってきた。

「もう、ウサちゃんたら。」

 メグちゃんも入った。

「へへへ。ごめんなさい。ちょっと楽しくて…。」

 あっさりと非を認めたウサちゃん。


 ここは私が、

「タマオくん凄いね。一発で入れるなんて。」

 タマオくんの顔が、パッと明るくなり、

「そうだろう。コツはな…。」

「タマオくんばかりズルいぞ。」

 食い気味で割り込んだ。

「あっ…。ごめん。」

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