第9話 出遇い

「おい!」

 微睡(まどろ)みの中。声が聞こえる。

「おいってば!」

 まただ。でも、私は『おい』じゃない。

「おい!」

 今度、強く。そして、体を揺すられた。


 目を開くと、そこに私を覗き込む男の子の顔のアップがあった。

「起きた。」

と、顔を引く。

「こんな所で寝てると風引くぞ。」

 次第に意識がはっきりしてくる。

「私はどうして? ここ何処?」

「お前の事は知らない。」

 続けて、

「ここは山。」

 真面目なな回答に、少し腹が立ち、

「そうじゃ無くて…。」

 どう聞けば良いのか判らない事に気が付いた。


 その時、気が付いた。目の前の男の子の服装が、ちょっと昔の感じだった事に。まあ、田舎だから不思議じゃないか…。と、その時は自分を納得させた。


 痛みって、よく走るって表現するけど、この時初めて実感した。

「痛!」

 体のあちこちに痛みが走った。

「怪我してるのか?」

 男の子が、心配そうな顔になった。


 改めて確認すると、腕と脚に擦り傷がいっぱいあった。

「大丈夫か?」

「うん。擦り傷はあるけど、大丈夫みたい。」

 男の子の顔が、パッと明るくなり、

「良かった!」

と、自分の事の様に喜んだ。

「でも、バイ菌が入ったら大変だ…。」

 少し考え、

「歩けるか?」

と。


 私はゆっくりと立ち上がり、確認してた。

「歩けるよ。」

「じゃあ、付いて来いよ。」

と、くるりと向きを変え歩き始めた。


 ここが何処かも判らない不安があったのだろう。初めて会った男の子の背中を追いかけようとして、気が付いた。

「待って、お花が…。」

「ん?」

と、男の子は立ち止まりこっちを向き、

「花がどうした?」

と、私の周りに散らばった花を見た。

「お父さんにあげようと思って…。」

 男の子はしゃがみ込んで花を拾い始めた。私も遅れて、花を拾う。


 粗方(あらかた)拾い終えると、摘んだ時よりは減っていた。

「ありがとう。」

 お礼を言ったのに、

「うん。」

と、ぶっきら棒に返した。ちょっとムッとした私。


 男の子は直に、

「行こう。」

と、歩き始めた。その後ろを追い掛ける私。


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