第7話 花摘み

 花が咲いている所まで駆け寄る。


 しゃがみながら、花へと手を伸ばす。そして、摘み取る瞬間に思い出した。

(あっ、来る途中で見えたのはお花畑だったはず。)

 車から見た時に、色取りの場所が見えた。たぶん、あれはお花が咲いていたんだ。

 ここから、離れてなかったし、大きな道を行けば迷ったりしない。

 思ったが早いか、歩き出した。


 車で通った道を記憶にあるお花が咲いている場所へと向かう。


 程無くして、色取りの場所が見えてくる。

「あった!」

 そこへ向かおうとして判った。

「どうやって行けば…。」

 私の目的地を田んぼが遮っていた。


 気が付いた。

 田んぼと田んぼの間に土で盛られた道がある事に。俗に言う『畦道(あぜみち)』


 畦道の上にそっと踏み出し確認する。

「大丈夫そう。」

 バランスを取りながら歩き出す。


 目的地は見えているのに、田んぼが邪魔をする。

「これって、田んぼの迷路だ。」

 初めての経験に、ちょっと興奮気味な私。


 私は頑張った。田んぼの迷路から出られた。

「やったー!」

 迷路の出口はお花畑。



 赤、青、黄、白、桃と名前も知らないお花がいっぱい。

「学校の花壇より、いっぱいある。」

 私は夢中になって、花を摘んだ。


 直に左手が花でいっぱいになった。

「すごーい。綺麗…。」

 花を独り占めし悦に入る私。ふと、

「これお父さんに見せたら、喜ぶかな?」

 お父さんの笑顔が浮かぶ。

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