第2話 道中

 お父さんには大丈夫と言っていたが、長距離運転はお母さんを緊張させていたみたいだった。

 ほとんど無言で、集中していた。流していた音楽だけが車内を満たしていた。


 一般道を走っている間は景色の変化を楽しめた。

 でも、高速道路に入ると、同じ様な景色に飽きた私はいつの間にか眠ってしまっていた。

 寝た事でかえってお母さんは運転に集中できたのかも。

 そのまま高速道路は、ずっと寝てた。


 目が覚めたのは、高速道路を降りる所。そこの急カーブで体が揺られて起きた。


 一般道へ降りると周りは、田舎の風景って感じになっていた。三年前に来た時もそう感じてた様な…。


 ある交差点に差し掛かった。確か、左に曲がって…。

「あれ?」

 思わず声が出た。

「お母さん。さっきの交差点、左じゃなかった?」

 感心したように、

「ミサキ、よく覚えてたわね。」

 続けて、

「お父さんを迎えに行く駅までの道を下見しようかと思ってね。」

「そっか、お父さん電車で来るんだね。」

 お父さんが来るって事が現実的で嬉しかった。

「子供の頃とは変わってないと思うんだけど…。」

 ちょっと不安そうなお母さん。


 五分もしないうちに駅が見えてきた。テレビでよく見る田舎の駅。平屋の無人駅。

「何にも無い…。」

 初めて見る駅前の感想。

「そうだね。昔はお店あったんだけど…。」

 お母さんは、駅前の変化に驚いていた。が、気を取り直したのか元気に、

「駅も見たし、行こうか。」

「うん。」

 駅前で車を回し来た道を戻る。


 さっきの交差点を過ぎると、風景に記憶が追い付いてきた。

 次々と前に来た時の事が思い出される。



 しばらくすると、記憶の目的地のお母さんの実家が見えてきた。

「見えた!」

 思わず指差した。

(ここから、駅ってそんなに離れてないんだ…。)

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