第111話 会議の終了
「どのような罪になるんだ?」
「詳しくは裁判所にて決定することですが、皇帝陛下の名を騙った事、他国への強制侵略、軍隊の私物化など、かなりの重罪となると考えられます」
「彼の家族は?」
「はっ、彼は子爵家の三男坊でして、父親と母親は亡くなりましたが、二人の兄は健在です。長男は子爵家を継いでおりますが、今のご時世ではなかなか家を維持していくのも大変なようで…。おっと、失礼、次男は官僚試験を受けておりますが、点数が低く、下級採用となりました。しかし、それを嫌い、結局働いてはおりません。
弟が上級採用だったので、そこも我慢できなかったのでしょう。
最後に妹が一人おりますが、子爵家でないと嫁には行かないと言い張っており、未だに独身です」
昔の子爵家だったという誇りが時代が変わった事について行けない。このままだと、バークレイ家は潰れてしまうだろう。
「それだと、どうやって彼の兄弟は生活しているんだ?」
「一つは昔の財産を食いつぶしています。そして、もう一つはケントの給料を充てにしているようですが、官僚の給料では昔の子爵家の生活に馴染んだ浪費癖を補填できる訳がありません」
「バークレイ家が、おかしな行動に出るかもしれないな」
俺の言葉に宰相が答えた。
「陛下のおっしゃる通りと思い、憲兵隊に邸宅を監視させてございます。それと、テロ行為も考えられますので、消防隊も合わせて夜間の見回りをさせております」
「王都については、宰相に任せよう」
帝国会議は終了となり、自宅に戻った俺は、翌日、エリスの転移魔法で再び、エマンチック国に戻った。
エマンチック国に戻ると、ポセイドン王にエルバンテ方式の統治方法を説明する。
「なんと、政は国王が行うのではなく、宰相が行い、その宰相は国民が選ぶというのか?」
「はい、宰相も全ての事に対応できる訳ではありません。なので、別に大臣というのを設け、その者たちが各部門別に政策を考えます。
しかし、その政策は国会という議事を経て、ようやく国が実行することになります」
「なるほどのう。なかなか回りくどいやり方だが、そういう方法もあるのかのう」
「しかし、実際に政策を実行するのは、官僚と呼ばれる者たちで、これらは試験によって決まります。それと、罪を犯した者は裁判というもので罪状を決定します。これは国王と言えど、その罪を軽減することはできません」
「うーむ、公正な裁きが出来るということか」
ポセイドン王が呟くように言う。
現在、エマンチック国では至る所に学校を造っており、完成次第、そこで授業が開始されている。
その授業は、子供は昼間に授業を行い、大人は夜間に授業を行っている。
そして、学校では大人も子供も給食を出すので、食事欲しさに学校に来る。
もちろん、この費用はかなりの額に昇っているが、それは国の将来を考えると先行投資ということになるだろう。
「義父上、そしてこれが、新しい街の設計図です。国が豊かになってくると、経済が発達し交通量も増えますし、人の往来も多くなりますが、現在の街ではキャパシティが十分ではありません。
本来なら、街の区画整理とかを行うのですが、この街はすばらしい街なので、ここより内陸に新しい経済の街を造りたいと思います」
「そうなると、この街はどうなる?」
「このまま、ここに住みたいと言う人間がいれば、このまま住んで貰ってもかまいませんし、展望や街の造りでも観光資源にもなると思いますので、このままとします」
「新しい街への移住もできるのか?」
「もちろんです。そこは住民の意思に任せます」
今の王都と西側の砦の間に、近代的なビルを中心とした新しい街を建設中だ。
しかし、今のエーゲ海のような面影を持つ、白い町並みはこのまま残す。
ここは、道が狭く、車も乗り入れが出来ないが、歩いて散策すると海から吹き上げて来る風がとても気持ち良い。
ここは心の安らぎを求める、そんな人たちにとっては、憩いの場となるだろう。
そんな中、ひとつの報告が入って来た。空港が完成したのだ。
早速、空港に行ってみたが、建物は1階のみで、しかも土造りだ。これは土魔法を使って作ったので応急的な空港ビルになっている。
その横には、3階建ての空港ビルを建設中である。
滑走路は、ちゃんと舗装までしてあった。
「滑走路はちゃんと舗装がしてあるぞ」
「舗装していないとシェット機では離着陸が難しいですし、離着陸の度に、埃が舞うのも大変です」
工事監督が説明してくれる。
「そろそろ、第一便が到着しますよ」
監督の指差す方向を見ると、小さな飛行機が飛んで来るのが見えた。その影は徐々に大きくなっていく。
遠くから見ていたら、小さく見えた飛行機も着陸するとかなりの大きさだ。
まだ、仮のビルなので、ボーディングブリッジはない。なので、飛行機にタラップが横付けされ、乗客はそこから乗り降りすることになる。
そのタラップに一番最初に姿を現したのは、ご隠居さまだった。
「あっ、義父上」
「まあ、お父さま」
俺に続いて、ラピスも声を上げる。
「なんと、あれが、エルバンテ帝国のご隠居殿か」
ポセイドン王も驚いた様子だ。そのご隠居さまに続いて姿を現したのは、今や完全に八兵衛状態となっている、マシュードたちだった。
ご隠居さまは、俺たちの姿を見つけるとこちらにやって来た。
「婿殿、態々、エルバンテから来たぞい。早速、マリンの父親とやらを紹介してくれんか?」
義父にそう言われた俺は、二人を紹介した。
「義父上、こちらはまだ開発に着手したばかりで、お宿とかはございませんが…」
「いや、いざと言う時は、テントでも良い。婿殿がカイモノブクロを改造したテントを持っている事は知っておる。それで良い」
「あっ、いや、ご隠居さまをテントに泊めるなどという事は……」
「ならば、我が王宮に来れば良い。ご隠居殿、そうされよ」
「おお、ポセイドン王のご親切に甘えるとしよう。どうじゃな、今夜は二人で、これはどうじゃ?」
義父は右手で酒を飲む仕草をした。
「おお、良いご提案ですな。今夜は満月ゆえ、我からもお誘いしようと思っていたところでした」
今夜は満月なんだ。ウォルフが狼男に変身するかもしれないな。
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