第78話 ドラゴン退治と体力の回復

 湖から出たドラゴンは空を飛び、俺たちを追いかけて来る。追いかけて来つつ、ファヤーボールを放つが、エリスたちの三重結界があるので、被害はない。

「ご主人さま、どうしましょうか?」

 ネルが聞いてきた。

「レールガンで動きを止めて、そこにミュとエリスに突っ込んで貰う。エリスはミュに強化魔法をかけてくれ。エリス、ミュいいか?」

「それはいいけど、どうやって、レールガンの前までドラゴンを持って行くの?」

「それはフェニに誘って貰う。フェニ頼むぞ」

「ピー」

 天井の穴からフェニを外に出すと、モニターにフェニが空高く、舞い上がるのが見えた。

 そのフェニを目掛けて、ドラゴンがファイヤーボールを放つが、フェニはフェニックスなので、ファイヤーボールはフェニを元気にしてしまう。

 そうやって、徐々にドラゴンを極地探検車の前の方に誘導して来るが、ドラゴンもファヤーボールがフェニに対して効き目がない事を悟ったようだ。

 一旦、ファヤーボール攻撃が止んだと思ったら、今度は口から吹雪を噴き出した。

 フェニは火には強いが、反対に寒いのは苦手だ。

 フェニの輝きが鈍くなり、とうとう極地探検車に戻ってきた。


「氷系の魔法まで使えたのか、誤算だった」

「それでは私が行きます」

 ネルが立候補してきた。

「ネル、大丈夫か?」

「私は、氷系の魔法に耐性がありますから、問題ありません」

「では、任せたぞ」

 ドラゴンは吹雪攻撃をしていたが、その攻撃の隙間を狙って、ネルがフェニが出た天井の穴から出ていく。

 ネルは箒に乗って、ドラゴンの吹雪を躱しながら、徐々に極地探検車の前の方に誘導して来ている。

「クラウディア、レールガンの用意!」

「は、はい。レールガン格納扉解放、レールガン出します」

 後部に取り付けたカメラに、1号車天井から出てくるレールガンが写った。

 このレールガンは左右に動かないのが欠点だ。なので、その時は、車を左右に振らなければならない。

「エミリー、レールガンを頼む。射程範囲に入ったら、撃ってくれ。エリス、ミュ、レールガンが命中次第、突っ込んでくれ。頼むぞ」

「「「了解」」」

「ドラゴン、来ます。このままで、後10秒」

 クラウディアが、モニター画像からAI予測した状況を説明する。

「5,4,3,2,1,0」

 0の合図と共に、エミリーがレールガンの引き金を引いた。

 すると、凄まじい音を発してレールガンから発射された魔石弾が赤い光となって、ドラゴンの右胸に突き刺さった。

 ドラゴンは一瞬、動きが止まる。

 そこに、ミュがオリハルコンの剣を持ってレールガンの当たったところを目指して飛んで行くのが、モニターに映った。

 もちろん、エリスが魔力強化のため、ミュと一緒にドラゴンに突っ込んでいく。

 ミュとエリスは、ドラゴンの身体を突き抜け反対側に出た。

 ドラゴンは、ゆっくりと後ろの方に倒れていく。

「よし、やったぞ」

 ミュは、早速、ドラゴンの胸の辺りをオリハルコンの剣で裂いて、魔石を回収している。

 前回は、魔石を破壊してしまい、その欠片しか手に入らなかったが、今回は無傷のまま回収できた。

 エリスたちが極地探検車に戻って来た。

「お疲れさん。後はゆっくりしてくれ」

 ミュの手にある魔石を確認すると、バスケットボール大の大きさがある。

 普通の魔物の魔石が拳大なので、ドラゴンの魔石がいかに大きいか、ということが分かる。

「あっ」

 ミュが膝を付いて倒れた。

「ミュさま、しっかりして下さい」

 クラウディアが駆け寄る。

「ヒール」

 すかさず、エリスが回復魔法をかけるが、ミュは一向に良くならない。

「仕方ない、エリス、トウキョーの自宅に転移。ミュの回復を図る」

「分かったわ、シンヤさま」

 エリスが広げた魔法陣に乗ると、トウキョーにある俺たちの自宅の寝室に移動した。

 約1時間後、体力の回復したミュと体力が衰えた俺は再び、極地探検車の中に転移してきた。

「いいなぁ、ミュ姉さまだけ」

 マリンが言うが、それはいろいろと人に言えない事がある。ここはスルーしよう。

「えへへ、私もちゃっかり、体力回復しちゃった」

 エリスのその言葉にラピスたちが文句を言う。

「ミュさまは仕方ないとして、エリスさままで、そのような事をするなんて、ルール違反です」

「そうです。私たちにも体力回復をお願いします」

「そうだ、そうだ。我々は断固戦うぞ」

 マリンよ、それは学生闘争だ。ここでは関係ないだろう。

「ご主人さまは、私の事がもう嫌いなのですね」

 ネルも文句を言って来る。

「いやいや、エリスも今回頑張ったし、回復魔法とかである程度体力も使っていたから仕方ないと思ってな。今度、ちゃんと、みんなともするから、勘弁してくれ。

 ネルには献血をしてやるから」

「け、献血ですか?それなら問題ありません」

「まあ、仕方ないですね」

「そうですね、仕方ないです」

「もう、仕方ないです」

「それは、私にもして貰えるのでしょうか?」

「「「「「「却下」」」」」」

「えっ、却下?えっー、私だけダメなんですか?」

「だって、クラウディアはシンヤさまの妻じゃないもん」

「陛下の奥様方でないとだめなんですか?」

「そうです」

「いいなあ、奥様方だけして貰えて」

 絶対、クラウディアは何か勘違いしていると思うが、ここで何か言うとややこしくなる気がするので、俺は何も言わない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る