第72話 ファネスル撃退作戦

 森から木を伐り出して、ヤマトから20kmのところにコ形に櫓を建て、そこに鏡を張り付けて行く。

 それを2頭分、作る。

「作戦はこうです。まず、1頭をこちらに誘い出します。

 誘い出すと、ファネスルは鏡の所で止まりますので、そこに加速器重粒子砲を撃ちこみますが、慎重を期して、加速器重粒子砲の直前にバンカーミサイルを撃ち込み、傷がついた所に加速器重粒子砲を撃ち込む事にします。

 しかし、これには課題もあります。バンカーミサイルと加速器重粒子砲のタイミングが合わないと効果が薄れます」

「聞いたとおり、砲撃隊、特にミサイル隊の責任は重大だ。どうだ、出来そうか?」

 レイド将軍がミサイル隊に言う。だが、それは、すごいプレッシャーになるぞ。

「……」

 ミサイル隊が固まった。それはそうだろう。加速器重粒子砲とタイミングを合わせるなんて人間の手では、なかなか難しいタイミングだ。

「わ、分かりました。期待に応えるように頑張ります。ですが、頼みがあります。キューリットさん簡単な装置でいいので、シュミレーターを作って貰えませんか?」

「分かりました。明日には作って持って行きます」


 キューリットは一晩でヤマトのコンピューターを使ったシュミレータを作った。朝からミサイル隊はそれを使って、加速器重粒子砲とバンカーミサイルとの連携訓練を始めた。

「キューリットはどうしている?」

「加速器重粒子砲に使用する魔石重粒子を製作しています」

「タケルは?」

「キューリットさんと一緒です」

「ポールもいっしょなのか?」

 キューリットの夫はポールだ。人族と白熊族で結婚したが、ポールは軍隊で隊長を努めており、キューリットは魔石研究でこちらも忙しい。

 人族と獣族の間には子供は出来ないので、未だに二人暮らしだ。


 そうしている間にもファネスルを迎える準備は着々と進んでいる。

「監視員、ファネスルはどうしている?」

「衛星画像と監視ドローンの映像から、腹が減って来たようで、近くの魔物を狩っています。ですが、近くの魔物も少なくなったようで、移動を始める模様です」

「そうか、ならこちらに誘導するとするか?」

「どうやって、誘導しますか?」

「簡単だ。こちらに向かう道の途中に豚や牛を置いておけばいい」

 まず、1頭目を誘う事にし、ここへの途中に豚や牛を繋いでいく。

 すると、早速、動物の臭いを嗅ぎつけたのか、一番近くの牛に襲い掛かった。

 その牛を食べ終わると、さらにその先の豚も食べに行く。

 そうやって、徐々にヤマトの方に誘導されて来た。

「ファネスル1頭目、来ます」

 ヤマトのCICで監視ドローンを見ていた隊員が言って来た。

「いいか、来るぞ、全員戦闘配置」

 ヤマトの中に警報が鳴り響く。

 その警報の中、隊員が忙しく走り回った。

 キューリットとタケルがミズホに臨時に作られていた研究室からこちらに来た。

 タケルが、手に二つの箱を持っている。

「タケル、それは?」

「これは、魔石重粒子です。やっと二つだけ出来ました。失敗するともう後はありません」

 その言葉を聞いた隊員の顔が青くなった。特にミサイル隊の隊員は真っ青だ。

「ミサイル隊、聞いた通り、責任は重大だ」

「わ、我々はこのために、睡眠時間を削ってシュミレータで訓練してきました。訓練の成果を出すだけです」

「加速器重粒子砲隊はどうだ?」

「我々も訓練の成果を出すだけです。ミサイル隊との連携には自信があります」

「よし、お前たちに任す」

 レイド将軍が発破をかけた。


 櫓一面に鏡が張り付けられている。

 このコ形の真ん中に入ると、自分と同じ姿が三方に写るので、何が起こっているのか一瞬には理解できなくなるので、動きが一瞬止まる。

 この止まった瞬間にミサイルと加速器重粒子砲を撃つとうという訳だ。

 だが、これには問題もある。

 ファネスルの動きが止まらない場合や、ミサイルが発射後、直ぐに加速器重粒子砲を撃たないと、的がズレてしまう。そのためには、迅速な連携が不可欠だ。

 ファネスルは、誘き出すために置かれた獲物を徐々に喰らいながら、罠に近づいて来る。

「アロンカッチリアさん、マリン砲身冷却開始して下さい」

 マリンがアロンカッチリアさんが作った砲身を囲む土の間に水を入れて行く。

「今から、凍らせます。フリーズ」

 マリンが砲身と土の間に入れた水を凍らせた。

 だが、水は凍らせると体積が増えるので、土にヒビが入る。アタンカッチリアさんはそのヒビが入った所を土魔法で修理していく。

 これで、氷漬け砲身の完成だ。


 ファネスルは、鏡が一面に張られたコ形の中に入った。

 前面には自分の姿が写っており、右にも自分の姿が、そして左にも同じ自分の姿が写っている。

 それを見たファネスルは思った通り、一瞬、動きが止まった。

「撃て!」

 その気を逃さずにレイド将軍が命令を下した。

「シュー」

 バンカーミサイルがランチャー台から発射された。

「加速器重粒子砲、加速開始」

「魔石重粒子加速開始。加速速度、270×10の8乗に到達」

「ミサイル到達、到達5秒前、3、2、1」

「加速器重粒子砲、発射」

 ヤマトの前方甲板にある第一砲塔の3つの砲身から、白い光の粒子がミサイルを追うように飛んで行く。

「ドーン」

「バンカーミサイル命中です。バンカーミサイルに付けられたマーカー確認してます」

「監視員が言い終わらないうちに、加速器重粒子砲から発射された白い粒子がバンカーミサイルの命中したところに突き刺さった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る