第40話 不死鳥

「潔く投降しろ」

 俺が女王に言う。

「ふん、妾に投降などと、人族のくせに…。アイスアロー」

「ウォターウォール」

 マリンが水の壁を出して、氷の矢を防ぐが、その水の壁が氷になった。

 女王のアイスアローは触れる物を凍らせる能力があるようだ。

 マリンも氷魔法は使えるが、さすがに触れた物を凍らせる事は出来ない。

「あの、氷魔法に触れると拙いぞ」

 俺の言葉に嫁たちも同様に思ったのか、黙って頷いた。

「旦那さま、どうしましょうか?」

 ラピスが聞いてきたが、これはかなりの強敵だ。俺もどうすればいいか分からない。

「ホワイトアウト」

 女王が叫ぶと、目の前が真っ白になり、吹雪になった。

 エリス、ミュ、ネルの三重結界があるので、吹雪はどうにかなっているが、寒さだけは結界を通して、こちらにも感じる。

「相手が見えないと攻撃のしようがないな」

「カン、カン」

 結界にアイスアローが当たる音がする。相手には俺たちが見えているようだ。

「くそっ、手が封じられた」


「ピー」

 その時、フェニが鳴いたかと思うと、ホワイトアウトの向こうに赤い閃光が見えた。

「ドン」

 フェニが何かに当たる音がすると、目の前に吹き荒れていたホワイトアウトが静まった。

 静まった先の女王を見ると、腹に穴が開いている。

 どうやら、フェニが女王の腹に突っ込んだようだ。

「「ファイヤーボール」」

 その隙を見逃さずにミュとネルがファイヤーボールを女王に投げつけると、女王が溶けて水になっていく。


「フェニ」

 俺はフェニを呼ぶと、フェニが俺の右肩に来て停まった。

「フェニ、良くやった」

「ピー」

 俺が褒めると、フェニが得意そうに一声鳴いた。

「やったー」

 マリンが飛び上がって喜ぶが、それは全員が同じ思いだ。

「ああ、確かにやった…、だが…」

「「「「「「???」」」」」」」

「シンヤさま、どうかしたの?」

「いや、悪魔族は身体に魔石を持っているはずだが、オーロラは全てが氷の身体で魔石がなかった」

「ええ、確かに」

 ラピスが思い立ったように言う。


「妾をよくも倒してくれたな」

 全員が声のする方を見ると、女王オーロラが後ろの扉を開けて入って来た。

「えっ?」

 倒したオーロラは床に水になっていたが、今では凍って氷の丸板のようになっている。

「ど、どうして…?」

「妾は不死身じゃ、お前たちの攻撃なんぞ痛くも痒くもないわ」

「どうやら、あの扉の向こうに秘密がありそうだな。倒したら、後ろの扉を開けて、中に入るぞ」

「「「「「「はい」」」」」」

「フェニ、頼む」

「ピー」

 フェニを再び放つと、フェニが高い天井に舞い上がる。

「アイスレイン」

 オーロラが叫ぶと、氷の細かい雨が、下から上に降る。下から上に降る雨なんて初めて見た。

 だが、その雨に当たったフェニが凍って上の方から落ちてきた。

「「「「フェニ!!」」」」

 落ちて来たフェニは、氷の床に当たり翼が取れ、首が有らぬ方向を向いている。

「ホホホ、その鳥もお終いじゃ」

 フェニはピクリとも動かない。

「ホスピタリティ」

 エリスが白い翼を出し、白く輝く身体から、治療魔法をフェニに送る。

 だが、生きているのであれば、効果があるが、死んでしまえば、いくら治療魔法と言えど、生き返らない。

「だめだわ」

「ホホホ、次はお主たちの番じゃ、ホワイトアウト」

 再び、俺たちの目の前が真っ白になった。

「ミュ、ネル、フェニに特大のファイヤーボールを打ち込んでくれ。今なら、まだ見える」

「シンヤさま、何を言うの、フェニが焼き鳥になっちゃうじゃない」

 エリスが抗議してくるが、それに構わずファイヤーボールを打ち込むように言う。

「いいから、やるんだ」

「「ファイヤーボール」」

 ミュとネルが特大のファイヤーボールを出し、フェニに投げつけた。

 フェニは炎に包まれ、燃え上がった。

「ホホホ、見えもしないのに、悪あがきかえ」

 ミュとネルのファイヤーボールは温度も高い。フェニは直ぐに灰になった。

 だが、灰になった中に赤い光が見える。その光がだんだん大きくなり、ついには鳥の形になる。

「???」

 それを見て嫁たちは怪訝な顔をしている。

 そして、鳥の形をした中から、フェニが現れた。

「「「「「フェニ!」」」」」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る