第39話 ポーラーパンサー
「今から女王陛下が来られる、その場に跪け」
宮廷警備兵の白熊人が言う。
俺たちは言われるまま、その場に跪いた。
そのまま、そう時間も経っていないだろう。奥の扉が開く音が聞こえた。
「その者たちか?妾の国に不法入国したというのは」
「ははっ、その通りでございます」
先ほどの白熊人が答える。
「では、私が直接対応しましょう」
そう、女王が言うと、宮廷警備兵たちが俺たちから離れた。
俺たちは後ろ手に縛られたままその場に跪いている。
「エクトプラズム」
これはミュが人の生を吸う時と同じだ。女王も俺たちの生を吸うのだろう。
「ピー」
その時、俺の肩に止まっていたフェニが羽ばたくと、広間の上の方に飛び、今度は急降下で、女王が差し出した右手を焼いた。
焼かれた右手は床に落ちる。
その瞬間、ミュが縄を外し、隣に居たエミリーの縄をナイフで切る。
エミリーは更にラピスと俺の縄を切った。
マリンは自分で水魔法を使い、既に縄を斬り、同じ水魔法でネルの縄も切った。
その間はあっという間で、宮廷警備兵たちが手出しする暇を与えない。
俺たちは跪いていた状態から立ち上がった。
「無礼者、跪け」
白熊人が言うが、誰がそんな言葉に従うだろう。
女王を見ると、フェニに切り落とされた右手が回復している。反対に、落とされた右手は溶けて水になっている。
俺たちはそこで初めて女王を見たが、女王の顔は氷で、反対側が透き通って見える。
「なっ」
俺たちは思わず声を発するが、これは言葉にならなかった。
「アイスアロー」
宮廷警備兵が魔法で、氷の矢を射ってきたが、結界に憚れ、氷の矢は床に落ちた。
「「ファイヤーボール」」
ミュとネルがファイヤーボールを出し、宮廷警備兵に投げつけた。
「アイスウォール」
相手は、氷の壁を出して、ファイヤーボールを防ぐが、二人のファイヤーボールは強力で、それが2つもある。あっと言う間にアイスウォールは崩れ去り、白熊人に火が点いた。
「うわぁー」
一人が火達磨になる。直ぐに、仲間がそれを水魔法で消すが、火達磨になった白熊人はその場に崩れ落ちた。
魔法では敵わないと思ったのか、今度は剣で襲い掛かって来た。
「えい」
こちらにも剣で応酬する。だが、俺は剣の腕はからっきしだ。エリスも剣は使えないので、俺と一緒に皆の後方に居る。
しかし、宮廷警備兵は多い、剣の腕がないからと言って見逃してはくれない。
「とおー」
一人が俺の方に向かって来た。
「パン」
俺は拳銃を発射すると、こちらに向かっていた白熊人が倒れた。。
他の白熊人は、一瞬足が止まるものの、剣を振りかざし、再びこちらに突っ込んでる。
「キーン」
だが、その剣はエリスの結界に弾かれる。
「パン」
もう一度、別の白熊人を狙って撃つと、撃たれた白熊人はその場に崩れ落ちるが、白熊人は生命力が強いのか、再び起き上がり、剣を構えた。今度は額を狙って撃つ。
「パン」
撃たれた白熊人が倒れて、今度は起き上がって来ない。
どうにか二人は倒したが、その後ろから更にもう一人が斬りかかって来る。
俺は拳銃を終い、ゴッドアローを出した。
「ゴッドアロー」
俺の左手に現れたゴッドアローから直ぐに光の矢を射ると、こちらに突っ込んで来た白熊人を貫通し、その後ろの氷の柱に命中した。
「ガラララ」
柱はひびが入り、崩れた。
ミュたちの方もかなり倒したようで、まだ残っている宮廷警備兵たちが武器を構えたまま俺たちを囲んでいる。
「あなたたちは下がりなさい。『ホワイト』」
女王がホワイトと呼ぶと、後ろの扉が開いて、ポーラーパンサーが現れた。
草原で見たポーラーパンサーとは、狂暴さがかなり違う魔物が出て来た。
「ガルルル」
口から涎を出し、目が血走っている。
ポーラーパンサーは床に転がっている、白熊人を見つけるとその兵士に齧り付き、喰いだした。
俺たちはそれを戦慄して見ている。
白熊人を食い終えたポーラーパンサーはそれでも食い足りないようで、今度は俺たちを見て、今にも襲い掛かろうとしている。
「ウォーターリング」
マリンがウォーターリングを投げつけたが、ポーラーパンサーはこれを弾く。
「エリス、ポーラーパンサーの弱点は?」
「喉からお腹にかけての皮膚が弱いわ」
「ラピスとエミリーは携帯レールガンで両方の目を狙え。ポーラーパンサーが一瞬、怯んだ隙に、ミュとネルで作った特大のファイヤーアローをどてっ腹にぶち込むんだ」
「「「「「「了解」」」」」」
ラピスとエミリーがカイモノブクロから携帯レールガンを出し、右肩に構え、同時に引き金を引く。
赤白い弾はポーラーパンサーの両目に命中すると、ポーラーパンサーが仰け反った。
「「ファイヤーアロー」」
ミュとネルがファイヤーアローを出し、それを融合させると大きな紅蓮の矢が現れ、それがポーラーパンサーに向かっていく。
ファイヤーアローはポーラーパンサーの腹に命中すると、ポーラーパンサーを焼き、その身体を突き抜け、宮殿の天井に当たる。
それでも炎の勢いは強く、氷の宮殿の天井は溶けて半分以上が水になって落ちてきた。
「私のホワイトを良くも、殺してくれたわね」
女王が憤慨している。
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