第34話 黒い鳥人

 そう言った鳥人の男性の後ろに、20人ぐらいが出てきた。

 手に槍と弓を持っている。

 だが、折角渡った川を戻れと言われても、それはそれで困る。

「川を戻れと言われても困るので、スノーノースに行く道があったら教えてほしい」

「この川を下っていけば、ネルエランドという国に出る。そこから迂回できる」

「その頃には冬になってしまう。それにネルエランドは鼠族の国だ」

 わざと鼠族と言ったのは、ブラフもある。そう言う事で、鼠族を良い印象と思ってないように意識付けた。

 人族なので、鼠族に迫害されたと思ってくれるかもしれない。

 だが、その言葉を聞いて、鳥人たちが黙った。

 俺の言った事を俺の思ったとおりに、受け取ったのだろう。

「話は分かった。長老に聞いてみる。暫し待て」


 俺たちは川原で待つことになった。その間に鳥人にいろいろ聞いてみる。

「君たちは元々この地に住んでいたのか?」

「いや、違う。我々は元は今のネルエランドの場所に住んでいた。だが、500年前に南の方から鼠族が来て、俺たちの地を奪った。

 そして我々は自分たちの地を追われたのだ」

「それで、この地に住み着いたと」

「その時点で、俺たちの部族は散り散りになった。ある一部の族は南の方へ逃げた。しばらくはお互いに連絡もあったが、世代が変わるとそんな事もなくなった」

「では、君たち以外にも他に鳥族はいるのか?」

「今では音信不通になっているので、散り散りになった他族がどうなっているか、分からない。

 我々鳥人は飛行能力があるので、戦になると最初に突撃させられると聞いた事がある」

 それは鼠族がやっていた戦法だ。鼠族は、そのために鳥人を繁殖させ、子供の頃から思想教育を行っている。

 俺たちは鼠族に居た事、そして鼠族が鳥人を戦争のために繁殖と思想教育を行っている事を伝えた。

「なんと、鼠族はそんな事をやっているのか。あいつら許せん」

 俺からその話を聞いた鳥人たちが怒っている。

「鼠族は何故、他国を望むんだ?」

「一番の目的は不老不死の薬だ。その薬はダリアン国にあると言われているが、その国は女王が治める国で、100年ほど前に攻めた時に鼠族は徹底的に反撃を喰らった。

 それから、鼠族は大人しくなったが、つい最近、南の国を攻めたらしい。だが、そこでも反撃を喰らい、国王が戦死したと聞いた。

 そのため今は、後継者争いで、国が3つに割れていると聞いている」

 その情報はちょっと古いが、内容は正確のようだ。

「その情報はちょっと古い。今、後継者争いは収まり、国は1つになった。

 それに、その情報網があるなら、ダリアン国に不老不死の薬が無い事も知っているんじゃないか?」

「不老不死の薬は無いかもしれない。実はあるという情報もあって真実は分からない。

 あってほしいという、人の希望なのかもしれないが」


 不老不死の話を箒に乗ったままネルが聞いている。

 そこで、ふと疑問を持った。ネルの名前はネルエディットで、鼠族が治めている国はネルエランドだ、両方ともネルエがつく。

 その事をネルに聞いてみる。

「ネルの名前はネルエディットで、鼠族の国もネルエランドだ。どちらもネルエがつくが関係があるのか?」

 俺の言葉を聞いてびっくりしたのは、鳥人たちだった。

「えっ、ネルエディットさま…」

「もしかして、ダリアン国のネルエデッィトさま」

 そんな声が聞こえる。


「今のダリアン国の前は、私は南の方に居ました。今のネルエランドの所です。ですが、500年前に鼠族が攻めて来て、その時眠りに就いていた私は鼠族に対抗することが出来ませんでした。

 国民は私を抱えて、今のダリアン国に逃げました」

 そこまで、話をした所へ、空を飛んでくる2人の鳥人が目に入った。

 鳥人2人が俺たちの前に降りて来た。

 その鳥人に、ここで俺たちを監視していた鳥人が何か伝えた。

「今、話しを聞いたところ、その方はダリアン国のネルエデッィト陛下とお聞きしましたが、本当でしょうか?」

「私がネルエデッィトです。そして今は、このシンヤさまの妻としてスノーノースに向かう所です」

「そ、その証拠は?」

「これです」

 ネルは胸元からネックレスを出すと、その先にはコイン大のブローチのような物があり、紋章が刻まれていた。

「これは、ネルエデイットさまの紋章。確かにネルエディットさま、ご本人」

 鳥人たちが、その場に跪いた。

「こ、これは知らぬ事と言え、失礼いたしました。どうぞ我が国をお通り下さい。未来永劫の誇りとなります」

「それでは侍女の方々も、どうぞこちらへ」

「ちょっと待った。私たちは侍女ではないわ」

「えっ、違うのですか?」

「私たちは、シンヤさまの第一夫人から第五夫人、このネルは第六夫人だから、序列から言えば一番下よ」

 エリスが鳥人に答える。

「えっ、ネルエディットさまが第六夫人。なんと…」

 鳥人もその先の言葉が出てこない。鳥人たちが全員、ネルエディットを見る。

 ネルからの言葉がほしいという事だろう。

「う、うん、まあ、そういう事になって、この方たちは、お姉さまということになるかしら」

 年齢的には、ネルが多分一番上なんだろうけど。


 俺たちは、鳥人の国に入った。だが、この国は国というより村に近い。

 王宮のようなものはなく、家は全て崖に掘られた穴になっている。

 だが、そこに入るには空を飛んで入るしかないので、空を飛べない俺は下から上を見るとまるで俺の世界のマンションを見ているように思った。

 だが、崖の下にも広場があり、そこには何頭かの馬も飼われていたので、俺たちのキチンもそこに泊めさせて貰う。

 そして、俺とマリンはミュとエリスに抱えられ、ラピスとエミリーはビビで崖の中の一番大きな家に入った。

 だが、それを見て驚いたのは鳥人たちだった。

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