第13話 強力魔法

 俺と嫁たち6人が正門の方へ向かうと、城壁の上から矢を射ってきたが、距離があるので届かない。

 だが、近づくと射殺されるという警告にはなっており、ここから先に進む事は難しい。

「このまま、門だけ壊してもいいが、あの塀の上の弓兵は問題だな。ここはサービスしてやるか。

 では、いつものやり方で行こう。マリン、シーレインな」

 マリンは頷くと、左手を上に伸ばした。

「シーレイン」

 マリンが叫ぶと、塀の上に雨が降る。

「なんだ、雨か」

「この雨は、しょっぱいぞ」

 弓兵たちが騒ぎだした。

「次、ミュな」

 ミュも頷くと、マリンと同じように左手を城壁の上に差し出す。

「サンダーボルト」

 ミュが叫ぶと同時に雷が落ち、それが海水を伝わって、弓兵全員が感電し倒れた。

 あっという間に、城壁上の弓兵が居なくなった。


「さてと、では門を破壊するか。フェニ」

 俺が呼ぶと、右肩に泊まっていたフェニが翼を広げて「ピー」と鳴いた。

「あの正門に穴を開けてくれ」

 俺が、フェニに言うと、もう一度「ピー」と鳴き、俺の右肩から飛び立った。

 フェニはかなり上空に上がっていたが、そのうち火の塊となって降りて来た。

 そして、そのまま一筋の赤い光となって正門の方に向かう。

「ドン」

 音がしたと思ったら、赤い光は門の向う側に抜けて、その後には丸い穴が開いている。

「マリン、あの穴にウォーターツリーを突っ込んでくれ。その後、フリーズで凍らしてくれ」

「ウォーターツリー」

 マリンが、水で作った円錐柱をフェニが開けた穴に差し込んだ。

「フリーズ」

 マリンが突っ込んだウォーターツリーが一瞬で凍った。

 すると、門にヒビが入り、ついには壊れてしまった。

 水は氷ると体積が増える。そのために膨張した水で門が壊れたのだ。

 凍ったウォーターツリーはマリンが水に戻すと、地面に流れた。


「それ、今だ」

 その声を発したのは、モークレア将軍ではなく、ヒキアベックス将軍だった。

 その声と同時にヒキアベックス軍が正門に突入する。

 弓兵も既に倒しているので、城壁の上から矢を射られる事もない。

「「「「おー」」」」

 まだ一部壊れていない箇所もあったが、そこは兵士が群がって壊して行き、穴はどんどん大きくなっていく。

 ヒキアベックス軍に続き、モークレア軍も突入していく。

 そして、全ての軍が突入を完了する頃には、城の方から煙が上がっているのが見えた。

 恐らく、城の中にも突入して、既に宰相たちは討ち取られているのだろう。


「シンヤ殿、我々も行きますか」

 ノンデイル将軍が声をかけてきた。

「では、ご一緒に」

 ノンデイル将軍、その護衛と一緒に俺たちも破壊された門を潜る。

 見るとあちこちに犬族や猫族、うさぎ族の兵士の死体がある。

 その中を城に向かって進んで行く。

 城に近づくと、鼬族、豚族、鼠族の死体が多くなってきた。

 俺たちが城の外に到着すると、既に城の中からは火の手が上がっている。


 その様子を見ていると、中からモークレア将軍とヒキアベックス将軍が出てきた。

「ははは、完勝だ、完勝」

 ヒキアベックス将軍が高らかに笑う。

 だが、モークレア将軍の顔は怒りで赤くなっている。

「ヒキアベックス将軍、突入は我々の軍が先頭を切る手はずだったのに、何故、先に突入した?」

「門が壊れたのを見て、突入と判断したからだ。ぐずぐずしていた、お主が悪いだろうて」

「何、我々の軍を押さえるようにして突入していったではないか?それが何でぐずぐずしていただ。言葉には気をつけて貰おう」

「儂は本当の事を言ったまでだ。何なら、陛下の前で白黒つけても良いぞ」

「くっ」

「はははは」

 高笑いを残して、ヒキアベックス将軍は行ってしまった。


「国王陛下の名前を出すと黙ったのは何故です?」

 俺はその場に居た、ノンデイル将軍とモークレア将軍に尋ねた。

「ヒキアベックス将軍は前の国王陛下の第一夫人の兄でな。今の陛下にすれば叔父にあたる人だ。

 そのため、陛下もヒキアベッス将軍に対しては物腰が引けている」

「それに、ヒキアベックス将軍は大した手柄もないのに、妹のおかげで将軍になったという噂があって、本人も手柄がほしいのだろうな。

 まあ、手柄がないのは本当だが」

 そんな話をしていたら、縄で結ばれた兵士たちが連れて来られた。

 恐らく敵方の投降した兵士たちだろう。


「しかし、それにしてもシンヤ殿たちは凄いな。城壁の上の弓兵たちも一瞬にして倒したし、我々が手を拱いていた正門も簡単に破壊した。

 関所の役人60人を全て倒した話や猪牛の群れを倒した話も満更嘘でないことが分かったな」

 ノンデイル将軍が俺たちを称えてくれる。

 それにモークレア将軍も同意する。

「たしかに、あの強力な魔法があれば、ニードリアン派やムーギリアン派なんぞ物の数ではない。

 シンヤ殿たちが味方で本当に良かった」

「モークレア将軍、シンヤ殿たちがこれから先も味方かどうかは、分かりませんぞ。我々の行いで、敵に回る可能性もありますからな」

「ノンデイル将軍、冗談は止めてくれ。あの魔法を見たら敵になりたくはない」

「あれが全てではないでしょう。もっと、強力な魔法もあるはずです。きっと、今は秘匿しているのでしょう」

「シンヤ殿、そうなのか?」

「さて、どうでしょうか」

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