第4話 新しい武器
「それでは皆さん、お世話になりました」
翌朝、俺たちは村人全員に見送られて、村を後にした。
「お元気でー」
「また、いらして下さい」
大人から子供まで、みんなが手を振っている。
「長老、あの人たちは何だっんでしょう。南の国の人たちは誰でもあんなに強いんでしょうか?」
「ああ、国王もあんな人たちに喧嘩を売るなんて、なんて世間知らずだったんだ。
このままだと、国王の子供たちも全員が死ぬ事になるかもしれん」
「まさか!、全員が纏まれば5万の兵力があるんですよ」
「あの人たちには5万なんて物の数ではないだろう。我々が見た力だって、まだ序の口なんじゃないか?」
「そうかもしれませんね。彼らの本気の力を見る時は死ぬ時かもしれません」
「エミリー、携帯レールガンの性能はどうだ?」
「反動もなく、照準も合わせ易いです。さすがはキューリットです」
「旦那さま、私もエミリーと同意見です。威力の割に使い易いです」
キューリット・ガーミリオンは魔石研究者だ。
俺が北の国に行きたいと言ったら、嫁たち以外にも行きたいと言ったが、人数が多くなると、それこそ軍団のようになる。
そうなると相手に警戒心を抱かせるので、俺と嫁たちで北の国に行く事にした。
それに答えて、キューリットが魔石を使った武器を持たせてくれた。
そのひとつが、「携帯レールガン」だ。
レールガンと言えば、それこそ大砲のように砲台に設置する必要があるが、魔石を使う事で、携帯型のレールガンを造ってしまった。
しかも、弾が不要だ。魔石から発する重粒子を焼結させて発射する仕組みらしいが、キューリットに説明を求めても理解できないから、詳しくは聞いていない。
この「携帯レールガン」以外に、同じく魔石を使った拳銃とライフルを持たせてくれた。
拳銃は俺の世界の拳銃を説明したら、火薬を使わずにやはり魔石を焼結させて弾を発射する拳銃を作った。
弾丸を補充する必要はないが、連続して撃てるのは5発までということだ。5発分の魔石焼結に1分程時間が必要らしい。
それは魔石ライフルも同じで、1発撃つと、次の発射までやはり1分ほどかかる。
携帯レールガンも同じだ。魔石焼結にはどうしても時間がかかってしまう。
携帯レールガン、魔石ライフルは俺とラピス、エミリーが試射をしたが、俺が一番命中精度が悪かった。一番良かったのはエミリーだ。
携帯レールガンは2丁作ったので、ラピスとエミリーが持つことになった。
魔石ライフルは1丁だけだが、これはエミリーが持つ。エミリーの射撃精度はまさにスナイパーという程の腕だ。
拳銃は、俺とラピス、エミリーが1丁ずつ持つことになった。
「お館さま、いかがでしょうか?」
北の国に行く1か月前のことだ。魔石研究者のキューリット・ガーミリオンが俺たちのために武器を提供してくれた。
今は、拳銃の説明をキューリットから聞いている。
「凄いよ、キューリット。俺の世界でもこんなのはなかった。流石としか言いようがない」
「これも、ミュさんがあのジャイアント・ギドラの魔石の破片を回収してくれたおかげです」
そうだ、これはサン・イルミド川を下って来た、ジャイアント・ギドラという魔物を倒した時にミュが砕いた魔石を回収して作った物だ。
「ジャイアント・ギドラの魔石は砕けてもかなりの魔力がありましたので、砕けた魔石も十分利用が可能でした」
キューリットが説明を続ける。
「ところで、お館さま、これを…」
キューリットが差し出した物は長さ15cm、太さ2cm程の黒い筒のようなものだ。
「これは?」
「お館さまは拳銃もだめ、ライフルもだめ、レールガンもだめということで、お館さま専用の武器を作りました」
俺はキューリットからも、そんな目で見られていたのか。なんだか、気落ちしてしまう。
「これは、まだ未完成です。完成させるにはエリスさまの力が必要になります」
「え、私?何、何?」
いきなり話を振られたエリスが、頼りにされたと思って聞いてきた。
「エリスさま、これにゴットアローとゴッドソード、それにゴッドチェーンを融合して下さい。そうすると、これがゴットアロー、ゴッドソード、ゴッドチェーンになります」
「えっ、どういう意味?」
「それは融合させて頂ければ分かると思います。これもお館さまのためです」
「分かったわ、フュージョン」
エリスの身体が白く輝き、その光が長さ15cm程の筒に吸い込まれていく。
「ありがとうございます。では、お館さま、これをお持ち下さい。今から音声登録しますので、そこのマイクに向かって、それぞれの武器の名前をおっしゃって下さい」
「分かった、ゴットアロー」
「okです。次、お願いします」
「う、うん、ゴッドソード」
「はい、次、お願いします」
「ん、ゴッドチェーン」
「はい、登録しました。これでお館さま以外はこれを使う事はできません。では、まずゴットアローから試験します。
左手に持って、『ゴッドアロー』と叫んで下さい」
俺はキューリットから渡された筒を左手に持った。
「ゴッドアロー」
すると、黒い筒の両方から白く輝く粒子が出てきて、弓の形になった。
「おおっ」
俺と嫁たちが驚いていると、更にキューリットが続ける。
「そのまま、矢を番えて下さい」
俺は言われた通りに矢を番えるようにすると、手のところに粒子の矢が出てきた。
「そのまま、先の的目掛けて射て下さい」
俺は矢を引いた手を放すと粒子の矢は的に飛んで行き、的が爆発した。
俺たちが驚いているとキューリットが得意顔で言う。
「いかがですか、お館さま」
「今、狙い通りに飛んで行ったぞ。俺の弓の腕はそんなに上手とは言えないはずだが」
「これは狙った所は外さない弓です。お館さまの狙いとシンクロします」
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