Episode6
ダンっ!という地面を蹴る音とともに俺の蹴ったところに窪みができる
高めのAGIにものをいわせて1秒とかからずにモンスターの懐までもぐりこんで斬りつける
「ギシャアアアッ!」
「ふっ・・・!」
緑色の体液をまき散らしながら鋭くとがった前足で俺を攻撃してくる
一度目は剣で防いだが、二度目に少しかすってしまった
「っぐ・・・」
痛い
焼けるように痛い
でもこれくらい、あの子が喰らったものと比べれば!
「ハアアアッ!」
ザシュッ!っという音が響いたかと思うとシャアアァァ・・・と断末魔をあげたマッドスパイダーは光の粒子となって消えていった
「ふう、結構てこずったな・・・」
かなりてこずったが倒せたことに少し嬉しくなり、先に進もうとして違和感を覚えた
・・・あ
すぐにその違和感の正体に気付いた
「あの子のことすっかり忘れてた・・・」
忘れていたことに心の中で謝罪しつつ、急いで彼女の元へ向かった
彼女は涙目で彼女がマッドスパイダーと戦っていた部屋の中心で座り込んでいた
俺は意を決して彼女に話しかけた
「えっと、大丈夫?」
彼女は上目遣いで俺のことを見ると声にならない声を上げて俺にいきなり抱き着いてきた
「わっ!?」
しばらくの間そのままでいたのだが、俺はどうすればいいのかわからずただ呆然としていた
しばらくして落ち着いたのか顔を真っ赤にして謝ってきた
可愛かったから許す
本人にそんなことは言ってないけども
「あの、ほんとにごめんなさい!」
「大丈夫だから。気にしないで」
「うぅ・・・。恥ずかしい」
「あはは・・・」
思ったよりも物腰が丁寧だ
・・・いや普通か
それはともかく、いろいろ聞きたいことがあるから少しずつ聞いていこう
「えっと、いくつか聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「はい。あた・・・、わたしが答えられることなら」
今、あたしって言いかけたのかな
そこまで気にしなくてもいいのに
ま、いいや
とりあえず三つくらい聞いとこう
「まず、君はなんでここに来たの?」
「えっと・・・」
俺のその質問に答えずらそうに目をそらした
でもしっかりと答えてくれた
「あた、わたしがここに来たのはレベルを上げるためです」
「へえ。一人で?あ、しゃべりづらかったら素の口調に戻していいよ」
「あ、じゃあ素に戻します。えっと、あたしが一人で来た理由ですよね?」
「うん」
「いつもは友達と入ってるんですけど、今日はその子が入れないみたいで。仕方ないので一人でここまで来たんです」
「あ、じゃあ理由自体は俺と似てるんだね」
「え?」
「俺の場合はいつも一緒にプレイしてる友達が午後からじゃないと入れないみたいだからさ。そいつが来るまでここでレベリングしようかなと・・・」
「そうなんですか!?」
「え、あ、うん」
急に身を乗り出してくるもんだからびっくりしてちょっと返事に詰まってしまった
顔が近い・・・
彼女の吐息が俺の鼻のあたりをくすぐるくらいの近距離だ
彼女も気づいたのかまたしても顔を赤くして俯いてしまっている
気まずい・・・
とりあえず何か話そうと口を開こうとするが、言葉がなかなか出てこない
そうだ、名前を聞いてない
名前を聞いてみよう!
ついでにパーティーにも誘ってみるか
「えっと、もしよかったらなんだけどさ、しばらくの間俺とパーティー組んでくれないかな?」
「え、いいんですか?邪魔になっちゃうと思うんですけど」
「君がよければ」
「わかりました。じゃあ、お願いします」
「よろしく。じゃあ、申請飛ばすね」
そう言って俺は彼女に申請を送る
彼女、エミって名前なんだ
それは向こうも同じようで「Hyuga、ヒューガ、さん?」と不安げに呟いていたので「そうだよ」と頷いておいた
こっちも一応確かめておきたいので「エミ、さんでいいのかな?」と聞いたらコクリと頷きを返された
「ヒューガさん、あの、呼び捨てでいいですよ?」
「あ、じゃあそうしようかな。これからよろしく、エミ」
「はい、よろしくお願いします。ヒューガさん」
そのときのエミの笑顔はまるで大輪の花が咲いたように眩しく、綺麗だった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます