Episode2

「遅かったな。何してたんだ?」


「ごめん、キャラ設定に時間かかっちゃって」


「でも結局それに落ち着いたのな」


「うん。陸・・・ヒューガと同じでこっちのが落ち着くから」


だろうな、と俺は思った。

だってこいつと仲良くなったきっかけが、ゲームとかのアバターの姿をほぼリアルと同じにするっていうところが同じだったからなんだよな。

それから意気投合して同じゲームをプレイするようになったりして今に至るのだから。

というか今、陸弥って言いかけたよな。

ま、いいけどさ。


「ユウは武器なにを選んだんだ?」


「ん?弓だよ。ヒューガ近接武器でしょ」


「よくわかったな・・・」


「そりゃわかるさ。一体何年お前の相棒(親友)やってると思ってるんだ」


「それもそうだな。んじゃ、このゲーム世界でもよろしく頼むな、相棒・・


「ああ。こちらこそよろしくね」


握手を交わし合いそれ以降いろいろな話をして、ユウにステ振りの説明をして準備を整えたところで、俺たちはこの世界で初めての戦闘を行うべく街の外にある「はじまりの平原」へ歩いて行った


――――――――――――


「セイッ!」


高めのAGIを生かしたスピードでLV3モンスターの「ブルースライム」をすれ違いざまに斬りつけ、HPを削り、ユウが離れた場所から弓で狙撃する。

それを何度か続けているとスライムのHPが0になり光に溶けるように消えていった。

経験値の表示とドロップアイテムの表示がウィンドウに表れ、確認してから画面を消し、ふう、と大きく息を吐いた。


「だいぶ狩ったな」


「そうだね。最初のほうは連携もなかなかうまくいかなかったけど、大分息があってきたね」


「ああ。レベルももうすぐ4に上がるしな」


サービス開始から5時間くらいずっと狩りを続けていたおかげでレベルも3まで上がった。

上がった、のだが・・・。


「さすがにちょっと疲れたな・・・」


「そうだね~。僕は一旦落ちて休憩してくるよ。ヒューガはどうする?」


どうするかな・・・。

ユウみたく一度落ちるのも手だけど・・・


「俺は落ちないでこのままここに残って休憩してるよ」


「わかった。悪いんだけど今日僕は多分もう入れないと思う」


「了解。じゃあ、また明日な」


「うん。また明日」


そう言ってユウは街へ向かって歩いて行った。

さて、じゃあ俺はもう少しレベル上げをしますかね。


―――――――――――――――――――


「フッ!!」


短剣でスライムを斬りつけるとザシュッと音を立てて粘液をまき散らしながら光の粒となって消えていく。

結局ユウと別れてから3時間くらいずっとスライムを狩り続けていた。


ステータスが上がったからか大分楽に倒せるようになってきた気がする。

レベルも5まで上がった。

そろそろ別のモンスターを狩り始めてもいいかもしれない。

そう思って奥にある森に足を進めた。

森の入り口からは、あまり好ましくない臭いが漂ってくる。

こんなところまで忠実に再現しなくてもいいのにな、と思いはしたが近くに何かがいることがわかったので素直にそこは感謝しておこう。


そんなことを思いながらでこぼこした道を進んでいくと5、6メートル先に緑色の子鬼のようなモンスターが見えた。

ゴブリンだ。


常に全開で使っている<索敵>には他にも5体ほどのゴブリンと思われるエネミーが反応していた。

この数はちょっとまずいな・・・。

どうしたもんかと思案しているとゴブリンがこちらに気付いたのか「グギャギャ!」と鳴き声を上げてこちらに向かってきた。


「ちっ、気づかれたかっ」


周りを囲まれたがやるしかない。

まず1匹、もう1匹と急所である首を狙って倒していく。

このゴブリンたちは俺よりも3くらいレベルが高い。

ただゴブリンだからなのかあまり1体1体は強くはない。

ただ群れてくるのでソロプレイヤーにはかなり厳しいだろう。

ただ、あとスライムを2、3体倒せばレベルが上がるくらいのヒューガにとってみれば1体倒せばレベル6に上がるわけで・・・。

そうすれば当然ステータスも上昇する。

つまり――――。


「結構倒しやすくなるんだよ!」


そう、レベルが上がればHPやMPは当然全回復する。

全快すれば残り体力をしばらくは気にせずに済む。


「覚悟しろよ、ゴブリンども」


下剋上蹂躙が始まった。

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