四時間目 社会 

「仲間が欲しい」

「……へえ」


 音楽の授業が終わって教室に戻るなり、真顔でそう言い出す柳瀬に、石原はちょっと言葉に詰まった。


「お前は、それなりに友達いる方だと思ってたけど、違ったんだな。

 一応俺は、友達のつもりだから、元気出せよ」

「違うよ!? 俺だっているよ、友達!」


 柳瀬が焦りを顔に貼り付けて、些かやりすぎなくらい否定する。からかったつもりだったのだが、もし本気で柳瀬が気にしてたらどうしよう。

 柳瀬は大げさにため息をつく。


「勇者パーティと言ったら、僧侶……はもういるとして、魔法使いと、あと武闘家? あたりの仲間が欲しい。場合によっては盗賊とかも」

「あの世界だと、魔法使いギルドとか、武闘家ギルドに行けば仲間になってくれるんじゃないの? それか、冒険者ギルド、で一括りにされてるか」

「ギルドかー、憧れるよなぁ」


 恋する少女のように瞳を輝かせる柳瀬。石原は手で口元を隠し、ポツリと呟く。


「そうかな? 

 ……あれって現代社会でいう労働組合にあたるのかな」

「当たらねえよ。そんな夢のない組織には当たらない」


 もう十五歳のくせに、柳瀬は本当に夢見る少年だった。


「いやいや。現実見なよ。いかなる組織だって経営には金がかかるんだよ。

 たぶん異世界だって、紹介料とかかかるって」

「あ、でもそういうゲームならやったことある」


 柳瀬によると、仲間を酒場で斡旋してくれるらしいのだが、チェンジに金がかかるらしい。何度もチェンジして、ようやく目当てのステータスを持った仲間に当たるまでには、大金を失っていることもあるとか。

 聞いていると、それは妙に現実的なRPGらしかった。なんでも、金を稼ぐ方法のなかには、窃盗が含まれるそうだ。失敗すると、牢獄にぶち込まれる。


 石原はわくわくと手を動かした。なにそれやってみたい。


「俺、そういう性格悪くなりそうなゲーム好き」

「ああ……それで性格歪んだんだな」

「なんか言った?」

「いや、なにも」


 柳瀬は白々しく視線をそらす。聞こえてるんだよ。

 まあでも、性格がそれなりにアレなことは、石原も自覚しているため、特に言及することもなかった。


「……じゃあ僧侶マオが、勇者ユウイチに仲間紹介してやろうか」

「え、まじで?」

「うん、まじ。なんか楽しくなってきたし」

「よしっ! じゃあ将来有望な女の子を頼むよ!」

「おっけ。任せて」

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