[屋根裏心中]-2- 25年後、春
「で、この話が?」
言った男が投げたコピーの束は、ばさ、と音を立てて座卓に着地した。
今、この狭いワンルームには男が二人いる。紙を放り投げた男と、紙を渡した男だ。
紙を渡した男はニヤリ、と笑って問いを返す。
「感想を聞いてもいいか?」
その態度に多少苛立ちを覚えたが、問われた男は切り捨てる。
「医者に見せた方がいい」
その回答は求めていたものだったのだろう。男は二度三度頷き、「それがな」と前置いた。
「問題はこの男の死体が見つかった時の状況だ。男は屋根裏の窓から全裸で転落しているところが見つかった。ただし、死因は凍死だった」
「何が――」
男は言いかけて、口を噤む。なるほど。
「残念ながらもうこの家は取り壊されている。だから、何が居たのかはわからない」
男はそう結んで、机に出されていた缶ビールを引き寄せた。もう一人の男は、自ら放った紙をとりあげ、ぱらぱらと捲る。
そして不意に、手を止めた。
「なあ、この名前。もしかして――」
缶ビールに口をつけたまま男は言いかけた男の方を見やる。
「みのきち、じゃないのか」
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