贖罪

翼は次の日「高橋未来」の携帯に電話を掛けた。

「ご依頼の件ですがみつかりました。」

「ほんとうですか?では本日お伺いします。」

その二時間後高橋が事務所に訪れた。

「でどこにいるんですか?」高橋は勢いよく訪ねた。

「その前にお伺いしてもよろしいですか?「大東亜製薬の田中信弘さん」」

「誰のことですか?私は高橋。。。。。」

「うそをつくのはやめてください」翼は声を張る。

「あなたの服からは薬品のにおいがします。市販では売っていない薬の匂いです。そしてあなたの奥さんの旧姓が高橋だったとしらべました」

「そして、あすかさんからもお話を伺いました」

「そうでしたか。。。」あすかの名前に反論することをあきらめたようだ。

「あなた贖罪のためといってましたよね。未来あすかさんへのですか?」

「そうです」

「私の会社では20年以上をかけてがんの特効薬を作ってました。そのリーダーが私です。われわれが作っていたのは今までの薬とは違った構造をしていました。うまくいったならステージが高い人にも適応できます。もちろんがんは治せませんけどほかの治療法と組み合わせればのこりの時間を大幅に伸ばせます。しかし薬品と認められるには誰かの体を使って臨床せねばならない。もちろん自信はありましたがいざ臨床に臨むと誰もがしり込みしてしまう。そんな時臨床に協力に手を挙げてくれたのが未来あすかさんでした。彼女はステージ4でした。いわゆる末期がんです。」


「しかし」田中は息をのんでゆっくりと話し始めた。


「いざ臨床の段階において彼女は東京の病院を退院してしまったんです。芸能人である彼女を探すのは簡単だと思っていました。しかしどこの病院か全くわからない。まるで砂に潜ったように消えてしまいました。

そこで地元であるここに調べに来たのですが先生に会う前数日私が居酒屋で吞んでいると島悠人くんという青年と出会いました。

たまたま相席をしただけだったのですが年もだいぶ違うのになぜだか「馬が合いましてね」

おたがいいろんな話をしました。恋愛話が多かったかな?たのしかったですよ、そりゃあ」


「そこであなたは未来あすかさんと島さんのことを知ってしまった?」

「ええ。私は島君に彼女の状況を説明しました。どうやら彼女は彼に病気の事伝えてなかったみたいですね。」

「そうですか」

「そんなとき私たちの後に入ってきた大学生たちが彼女、あすかさんの悪口を言いはじめましてね。やれババアだの、男漁りにいそがしいだの。まったく芸能人には人権ってないんですかね?

当然島君は怒って彼らと口論になりました。

無理もないですよ。元彼女の病気を知ったその日に目の前で悪口を言われたんですから。」

「それでどうしました?」

「店の外で大喧嘩になって一人にけがをさせてしまいました。

警察に連れていかれる前に島君は携帯を渡し「あすかに臨床を受けるようにつたえてください。お願いします」と深々と頭を下げました。


「私が知っているのはこれで全部です」


「ありがとうございます。しかしあすかさんは自分の人生をあなたが思うほど悲観的には考えていないとおもいますよ。」

「え?」田中は少し驚いた。



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