第6章 序章
自分たちの新しい装束
時間軸は『璃音は役に立ちたいです!1st・fin』の数日後です。では、1ヶ月ぶりの更新です。どうぞ!!
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「仮にもうちらは女の子だにゃ。由莉ちゃんたちもそれなりの格好を現場ではするべきだと思うんだにゃ」
その音湖の発言から始まった自分たちの装束についての話し合いには、音湖を含め、由莉、天音、天瑠、璃音の5人で話し合っていた。
「そもそも、ねこさん、女だったんですか」
「ぶち殺されたいならそう言うにゃとっとと地獄に落としてやるからにゃあ!?」
「はいはい、そんなかっかしてると老けちゃいますよー」
テキトーに天音に流され音湖も呆れながら、みんなに話をしていった。
「……はぁ、んで何か案はあるにゃ? このままだと、シンプルなだけで終わっちゃうから折角ならこれを着て戦える、ってやる気が出るような服装がいいと思うんだにゃ」
「うーん……女の子らしい……璃音ちゃん、どう?」
「そ、そう言われても……分かりません……璃音も女っぽい服は……あまり興味がなかったので……」
「あーダメだ。ボクは興味ない派だ……天瑠は……ダメか」
「天瑠だけ扱い雑すぎますよ!? ……確かに分かりませんけど」
やっぱりこうなるかと5人は膠着状態に陥ろうとした時……6人目がその場に現れた。
「お前達、まだ決めてなかったのか?」
「あっ、マスター!はい……実は、」
事情を話すと、マスターはノートパソコンを立ち上げ、すぐさま候補をあげた。
「これはどうだ? 音湖もまだ21ならば、この類は行けるだろう?」
「マスター……ご慧眼ですにゃ。それならば、うちも着たくなりますにゃ」
「由莉たちはどうだ?」
マスターが呈示したのは、暗い紫の装束で上はノースリーブ、下はインナーが黒の紫のキュロットスカート、そこに黒色のニーハイという服装だった。
それが由莉も含め5人の感性にぴったり当てハマったようで、嬉しさを前面に表していた。
「はいっ! 天音ちゃんに天瑠ちゃん、音湖さんはそれでいいと思います! 天音ちゃんと天瑠ちゃんはどう?」
「……まぁ、ゆりちゃんがそう言うなら……こんなのもわるくない……かな」
「これを着て戦う……なんだか少し着てみたいですっ」
近接戦闘組の装束はこの方針で行くことになった。
そして、遠距離支援・狙撃組───璃音と由莉の装束はマスターの介入もあって、凄まじいくらい迅速に進まった。
「由莉と璃音は少し装束を変えようか。……そうだな……こんな感じでどうだ? 基本色は同じように、暗めの紫なのは同じだ。違うところは狙撃するにあたって長袖にする所と、下はショートパンツで黒のレギンスを合わせてみた」
「それでいいと思いますっ! マスターは服を選ぶのがすごく上手です……」
「服選びは基本だからな。似合わない服を着ようものなら目も当てられないし、そんなものを着るのは由莉たちも嫌だろう?」
マスターの言っている事は事実すぎて頷く他なかった。これで決まりか……と思った時、その意見に口を出したのは……なんと、璃音だった。
「あのっ……狙撃って、何時間も伏せて待つって由莉ちゃんからも聞いているので、うつ伏せの状態が楽になるようにした方がいいと思います。あと、寒い時にも耐えられる服装だと待ちやすいと思います」
「そうだな……分かった。それも入れておこうか。由莉と璃音の装束には防寒防熱性を持った素材を使うとして……あとは地面と接地する箇所を保護するようにクッション性のあるものを使おう」
瞬く間に構想の練り上がる様子に由莉たち5人は思わず目を見張っていた。さすがは一組織のトップだと思わざるをえない手際の良さである。
「さて、ひと通り出来たが……そうだな……それぞれで役割が違うのだから、装備を入れる部分はそれぞれに合うように調整するとしよう。……音湖は少し勝手が違うから、また後で来い」
「了解ですにゃ、マスター」
恭しくお辞儀をする音湖。その一方でその『勝手』とはなんなのか、マスターと音湖を除いた4人の頭にはハテナマークが浮かんでいた。
「マスター、あの……音湖さんの『勝手が違う』ってなんですか?」
「ん? ……音湖、もしかして言ってないのか?」
「言わずともいずれ知ることだと思っていたので、言わなかったですにゃ」
重要だろうに……とマスターはがっくしと項垂れると、音湖の特異性を由莉たちに伝えた。
「……音湖はな。『ほぼ全て』の武器を万能に扱えるんだ」
「ほぼ……全て…………!?」
人にはそれぞれ得意不得意がある。その武器を使えるかどうかは自分との相性や、才能や努力にもかなり左右される。もちろん、由莉や天音にだって苦手なものはある。だが………
それを音湖はほぼ全部の武器を遥かに高い水準で使いこなせるのだ。刀剣類ならば日本刀からククリナイフ、ダガーやスティレットまで、銃器ならば拳銃から散弾銃、機関銃にグレネードランチャーまで、投擲武器であるチャクラムや手裏剣、素手の体術ですら『出来てしまう』。
さすがは元・黒雨組No.1を持っていただけの神様に見初められたと言ってもいい戦闘スキルである、由莉を含めた4人は総毛立つような気分を味わいつつあった。
「とは言っても、狙撃の類はからっきしだがな。だから『ほぼ全て』と言ったのだ」
マスターがそう言うと音湖は得意そうに豊満な胸を強調するように反った。周囲の反応とマスターにもそう認めさせられた事を喜ぶように軽く跳ねていた音湖の胸もそれに合わせてぷるんと揺れている。
「…………」
「にゃははっ、銃もナイフも剣も素手も基本なんでも行けるにゃ〜〜、どうにゃ? 見直しt─────」
「胸を……こっちに向けるなぁ!」
バッチーンっ!と音が響き、音湖はあまりの痛さに胸を抑えながら絶句した。
「にゃっあ…………胸をぶっ叩くとか……ありえないにゃ……」
音湖も涙目でヒリヒリする所をさすっていると、天音が怒りを顕にして、由莉たちには決して向けることはないだろう低い声を浴びせた。
「次やったら、銃でその肉の重りを少し軽くしてあげてもいいんですけど?」
「……舐めた口聞くにゃあ? その絶壁ツルペタまな板を凹ませてあげてもいいんだけどにゃ?」
「っ、やっぱりぶっ殺す!!」
音湖にちょっと気にしていたことを徹底的にバカにされた天音は顔を真っ赤にして向かおうとするのを由莉と天瑠と璃音、3人がかりで食い止めた。天音のいつも以上の馬鹿力に3人でさえ止めるのがやっとだった。
「ダメだよ、天音ちゃん!」
「ぐっ……お姉さまの力強い……っ」
「お姉様! しっかりしてください……っ!」
そんな騒動の中、マスターは「またこの流れか……」と頭を抱えた。
「はぁ……天音を見ていると音湖と会ったばかりの阿久津とそっくりに見えるぞ……音湖も少しは成長したらどうなんだ。仮にも私を除いてお前が最年長なのだから、少しは慎みを覚えろ」
「うぐ……で、ですがにゃっ」
まくし立てられた音湖は何とか反論しようとするも、マスターの大きな手が音湖の額から脳天にかけて触れられ、言い返すことが出来なかった。
「ですがじゃない。……それで後悔したのをもう忘れたのか? 喧嘩なら好きにして構わんが、いがみ合いだけはするな。また、『あれ』を繰り返したくなかったらな」
「……分かりましたにゃ……」
宥められた音湖はシュンとしながら頷くと、マスターと共に装束の更なる調整をするために別の場所へと向かったのだった。
……と、そうは言ったものの、結局は度々喧嘩しあう天音と音湖なのであったが………2人の心は……同じだった。
『いつまでこんな事をすればいいの……?』
『いつまで……こんな事をすればいいのかにゃあ……』
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次話───6章序章後編は明日の夜更新です。
6章本編のスタートは2月末から3月頭にかけてとなっていますので、是非とも楽しみにしていてくれると、作者としては嬉しいです!!
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