EXTRASTORY 4人の少女の3ヶ月

璃音は……役に立ちたいです

足でまといになりたくないです

 お姉様に会えてから2週間が経って……璃音と天瑠はあれからすっかり元気になりました。

 今日からお姉様と由莉ちゃんと一緒に練習に参加することになって、少しうきうきします。


 またお姉様たちと練習出来る、そう思うとやる気か出てきます!


 璃音は天瑠と手を繋いで2人の後を歩くと、大きな扉の前に来ます。すると、由莉ちゃんがすごい速さで何かを触っていると、重そうなドアが簡単に開きました。


「すごい……」


「天瑠ちゃんと璃音ちゃんの武器もこの中にあるからね?」


 階段を降りながらそう話す由莉ちゃんに璃音も天瑠も、うんっと頷きながら下りると、すごく……広い空間がありました。どのくらい大きいのか璃音には分かりません…………。


「広すぎ……」

「大きい……」


「私も初めて来た時はびっくりしすぎて、今の2人みたいになってたんだよ?」


 歩きながら、そう笑う由莉ちゃんはさらに進み、奥の扉を開けると、そこには璃音の銃や天瑠の銃とナイフがありました。

 あの銃を近くから離したことがなかった璃音にとって2週間ぶりに見られた銃は心なしか、すごくきれいになっていました。

 ふと、由莉ちゃんを見ると気づいてくれたのが嬉しそうな顔をしていました。


「璃音ちゃんのショットガンと拳銃、天瑠ちゃんの拳銃は私が、ナイフは阿久津さんが研ぎ直したんだよ?」


「ありがとうございます、由莉ちゃん!」

「ありがとうございます!」


 璃音が手入れしていた時より、ずっときれいになっているし、動作も何となくだけど、少し軽いです……本当に由莉ちゃんはすごいです。

 でも、いきなりこれを使って撃つ練習はしないと思っていました。お姉様と練習していた時も、まずは……、


「じゃあ、まずはランニングしよっか」


 璃音の思った通りでした。あの頃も、最初はランニングをかなりやり込んでから射撃と戦闘の練習をしていましたから。


「天音ちゃん、どのくらいにする?」

「じゃあ、この周りを……2周。いける?」


 どのくらいの距離か分からないけど、2周だったら……いくら何でも大丈夫かな……?そう思いました。


 ─────────────────────────────


 ─1時間後─


 あれ……?まだ1周……?


 璃音は次第に……3人のペースに追いつけなくなって、1人で走っています。足音が璃音のしか聞こえなくなって……寂しい。


 ────天瑠も、由莉ちゃんも……お姉様もいない……いやだ……もう、1人なんていやだ……っ




 ─1時間半後─


 多分、2周目……の半分まで……来たと思います……。けど……ヘロヘロになって、足元がおぼつき……ません。


(璃音は……また……)




 足でまといになるの……?




 もう、目を開けるのも辛くて……真っ暗な中……トテトテと……もう、歩いているのじゃないかって思います……でも、足を止めたら……次は走れなくなると思います……天瑠も……お姉様も出来ることを璃音だけが出来ない…………璃音だけが……っ。


「璃音……どうした?」


「璃音ちゃん、大丈夫?」


「ぇ…………?」


 あれ………お姉様と……由莉ちゃんの声が聞こえる……? 


 何とか目を開けると……横には璃音の顔を覗く2人がいました。やっと……会えた。そう思った瞬間、足がもつれて転びそうになりました。咄嗟の事と極度の疲労で、頭が働かなくて呆然とする中、コンクリートの床が迫ってきて──────


「璃音!」

「璃音ちゃん!」


 顔をぶつけることはありませんでした。由莉ちゃんと天音ちゃんが璃音の下に入ってくれて、何とかなりました。


 …………けど、心は何ともなりませんでした。



 ────もっと……もっと頑張らなきゃ……皆んなに追いつかなきゃ…………っ。璃音だけ……1人になんて嫌だ……



 これ以上……皆んなの足でまといになるのは……嫌だ!!


 ────────────────────────────────


 それから、璃音は阿久津さんにお願いして、別のトレーニングをする事にしました。……もう、1人が嫌なんて言っていたら……みんなに追いつけなくなりそうでそれが……何より嫌でした。


 ─────璃音は……みんなと一緒にいたい。そのためにも……強くならなきゃ……じゃないと……また、みんなの邪魔になっちゃう…………っ!


 必死に……必死にやりました。苦しくても、泣きたくても……絶対に諦めるつもりはありませんでした。みんなに追いつけるのなら……璃音は何だってやります……っ!










 ……それでも、璃音は追いつけませんでした。


 璃音が強くなるのと同じ……ううん、それ以上に、天瑠も強くなっていって……璃音は……1人になりました。

 銃を撃つのだって、半分やけになって……そんな状態ではまともに当たるわけがない……そんなこと璃音だって知ってます!


「璃音、だいじょう……」


「天瑠は自分の練習して? 璃音に構ってなくて……いいから」


 隣で同じように撃ってる天瑠がそうやって聞いてるけど……今は何も話す気になりません……


「でも……」


「天瑠……おねがい……」


 やめて……一人にして……


「じゃあ……なんで璃音はそんな辛そうな───」


「いいからほっといてよっ!!」


「っ、………り……ね……」



 あ………れ……………………?



 いま……璃音は天瑠に何を言ったの……?



 璃音は……なんで……っ!



「…………ごめん……っ」


「璃音っ!!!」



 気がつけば……璃音は銃を手に持ったまま、射撃場を飛び出ていました……なんで……天瑠にあんなこと……天瑠は……ただ璃音を心配してくれただけなのにっ! 

 お姉様と由莉ちゃんが床に寝そべって、練習をしているのを横目に、階段を駆け上がっていきました。何でこんなことをしているのか……璃音にも分かりません……。



 ただ……自分が悪いのに、その鬱憤を天瑠になすりつけようとして……瑠璃お姉様から貰った大切な銃を……疎かに扱った自分が……どうしても許せない……っ


 こんなんじゃ……『ラズリ』の名前も……璃音には不相応です……。どうすれば……みんなみたいに強くなれるのですか……? どうすれば……璃音は足でまといにならずにすみますか?




 役に……立ちたい……っ

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