それぞれの戦い──ラピス──

 今日は怒涛の4話更新です!

 まずは─────ラピスの様子から見てみましょう。

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 とある建物に忍び入った黒髪のツインテールの少女は目標がいる部屋の直前で自分の装備を再び確認する。


(ナイフよし、銃の動作よし、マガジンよし、スモグレよし、……覚悟よし)


 久しぶりの人殺しだと、その少女は一呼吸入れると、表情を一気になくした。


(敵は5人……これを1人で殺るのはちょっと大変。でも……『ラピス』の名にかけて、失敗はしない。……絶対に)


 腰のポーチの小型端末で敵の位置をもう一度叩きこむと、一瞬だけ写真保存機能を開きみんなで撮った記念写真を眺め、ふふっ、と笑みを洩らす。それで覚悟がしっかりと固まったのか、すぐに端末を懐へしまった。


 そして、腰にぶら下げたスモークグレネードを手に持つと、そのピンを一気に引っこ抜く。


(一、二の……さん…………!)


 一気に投げ込むと部屋の真ん中付近でスモークが吹き出し部屋に一気に充満する。「なんだぁ!?」「おい!」と、怒号が聞こえた瞬間、天瑠は煙と音に紛れて部屋に侵入する。まずは横にいた2人、両手に投げナイフを持つと左右それぞれに頭を狙って投擲する。


(っ!)


 投げたナイフは顔面をサクッと貫き、声すら出させずに絶命させる。そして、腰にしまってある拳銃を手に取り、目の前の男に突きつけると躊躇いもなく引き金を引いた。


 パシュン!


 消音器サプレッサーを通した小さな音と共に放たれた弾は確実に男の脳幹をぶち抜き、そのまま前に倒れ込む。

 ふと、後ろから鈍器を振り下ろそうとした男の攻撃をさらりと躱すと、股下に潜り込んで、股間にサプレッサーを押し当てた。


「なっ!?」


驚く男のもっこりとした部分に向けて、ラピスは引き金をためらいなく引き絞る。


 パシュン!


「ぎゃあああぁぁぁぁーーー!!!」


 大事な部分を撃ち抜かれ醜い叫び声をあげる男をラピスは無視しながら、手だけ男の頭に突きつけ引き金を引き絞る。


 パシュン!パシュン!


 鼻に撃ち込んだ2つの弾は急所である脳幹を的確に貫き、屈強そうな男が小柄な少女の手でいとも容易く撃ち殺された。

 そして………呆然とするターゲットへ向けて銃を構える。


「ま、待て! 話せばわか───」


「………あなたはとくべつ」


 可愛らしく甘ったるい声を男に向けると、マガジンを落とし別のマガジンを差し込むと、カチャリとリロードする。

 引き金に指を触れるのを見た男は恐怖に気がついたように慌てて銃を向けようとする。そんな様子を憐れむようにして少女は人差し指に力を込めた。


「おまえぇぇぇーー!!! ただで済むとおも───」


 ───パシュン!パシュン!……パシュン!


 乾いた銃声が3発部屋の中に響いた。

 放った弾───ホローポイント弾は脳幹・心臓・首にめり込むと銃弾の先端がキノコのように窪み、脳の中枢をぐちゃぐちゃにし、心臓の分厚い筋肉の壁をぶち破り、頚椎を木っ端微塵にする。巨大な孔からは瞬く間に血が溢れ出し、真っ赤な池を生成した。


(……思ったより簡単だった……)


 サプレッサーの先からたなびく硝煙をふっ、と息を吹き付けると、ホルスターの中にしまい、蓋をする。

 銃と落としたマガジンを腰のホルスターにしまい、先に殺した2人に刺さっている2本のナイフを強引に引っこ抜くと、返り血が僅かに顔に飛び散った。


(…………汚い)


 若干うんざりしたような表情を浮かべる少女はそのナイフに付着した赤い汚物を壁に擦り付けると、血なまぐさい空間から颯爽と姿を消していった。





《……ラピスです。目標5人、全員始末しました》


《はい、お疲れさまでした。前にあと20秒で到着するので急いで乗ってください》


《了解です》


 端末の通信機能で淡々と話すと返り血をハンカチで拭き取ったラピス───天瑠は、ふぅ……と一息入れた。


「……うん、大丈夫だね」


 自分が人を殺すことに後ろめたい気持ちを持っているか心の中に聞いて問題ないと判断した天瑠は薄気味悪い笑みを浮かべる。


(普通の人から見たら天瑠は……きっと狂ってる。けど……別にいい。お姉さまたちと一緒にいられるなら)


 車が止まると同時に天瑠は後部座席の部分の窓から飛び入りそのまま車は出発した。


「仕事が早いですね、天瑠さん」


「お姉さまに鍛えられてますから当然ですよっ」


「ふふっ、そうですね。それにしても、天瑠さんって仕事の時は別人みたいですね」


「……確かに……そうかもしれませんね」


天瑠も何となく、いつもより冷静に動けていたからか、反応も割と淡白になっていたのかと自分でも省みていた。


「さて……天音さんと音湖はどうなっているでしょうかね」


「……大丈夫でしょうか…………」


 天音の経緯を色々教えて貰っていた天瑠は不安げに聞くと、阿久津は笑いながら天瑠をチラッと一瞥する。


「大丈夫ですよ。あの二人なら。普段はあんまり仲良くしませんが、近接戦で現最強の2人が組んだらマスターを除いて誰も手が止められませんよ」

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