No.2『クロ』

 ……………3日経つと、身体がかるくなりました。


 もう、泣こうと思っても……泣けません。

 自分が……なにをおもっているのか分からなくなりました。


(…………わたしはもう、もどれない)


 こんなこと……パパとママが知ったら…………



 コンコン、



 ドアを叩く音がきこえるとボスが入ってきました。きょとんとするわたしをつれてあの部屋にくると、ぱそこん?を見せられました。


「ボス、これは……?」


「見ておけ」


「は、はい……」


 ボスのことば通り、それをしっかりと見ていると────


「パパ……ママ…………?」


 映っていたのは白黒でしたが、まちがいなく……パパとママです。

 だけど……すこしもうごきません。


 なんで……?


 考えようとした時……だれかが、パパとママに近づくとその場でしゃがみました。なにかはなしているようでしたが、すぐに行ってしまい……そこでそのえいぞうは止まりました。


「…………」


「こいつが、お前の両親を殺したやつだ」


「っ!!?? ころ……した?」


『殺す』と『死ぬ』が……頭のなかで結びつきました。パパとママには…………もう……




 二度と会えない。




 やっと…………分かりました。


 わたしのパパとママは……殺された。


 あいつが……殺した。


 …………ゆるせない。




 わたしの……パパとママをうばったあいつを………




 今度はわたしがうばってやる。



 殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して─────





 復讐してやる。















 ─────────────────────



 ────あれから2年が経った。


 升谷天音は……この組織───『黒雨(くろさめ)組』でNo.2になるまでに強くなった。


 そして、いつしか───『ボク』は『クロ』と呼ばれるようになった。ボクもそう名乗るようにした。

 いつも、黒い衣装をつけているからこう呼ばれるようになったみたいだが、その方がいい。


 この名前を……パパとママがくれた名前をここで呼ばれるのは屈辱以外の何ものでもないから。


 初めて人を殺してから、ボクは人を何人も殺した。昨日だって3人殺した。先週も2人、その前は…………もう忘れた。この2年で何人殺したか分からないが多分、100人は殺したと思う。


 銃で頭を撃ち抜いて、ナイフで首を切って………殺して殺して殺しまくった。

 それに、いつの間にか人を殺すことがなんとも思わなくなった。正直、パパとママを殺したあいつを殺せさえすれば、あとはどうでもよかった。


 組織?どうでもいい。

 地位?どうでもいい。



 ───『ボク』というようになったのはなぜか? 理由は簡単。……『女』だと見くびられるから。それだけで馬鹿にされて貶されるなら……腹が立った。


 だから……『わたし』って言うのはやめた。

 その代わりに、パパが言ってたように『ボク』と言うことにした。


 それからは……ずっと1人でいた。1人の方が楽でよかった。突っかかってきた人がいたが軽く叩き潰した。力では勝てないけど、軽くナイフで切ってあげると、悲鳴をあげて逃げていく。


 ───『次は殺すよ?』と笑顔で見送って。


 それでもボクを殺そうとした人は、全員皆殺しにしてやった。そうしていい決まりだから。


『同族殺し』、それがボク────

 黒雨組No.2『クロ』の特権。


 黒雨組はボクを利用している。それくらい……嫌というほど味わった。


 なら、使えるものは好きに使わせてもらうことにした。どうでもいい力も役に立つかもしれない。




 ─────そう思っていた。なのに、今は…………




 ───────────────────


「ねぇ、クロ。そろそろ名前教えてよ?」


「次聞いたら殺すからな」


「相変わらずおっかないね〜No.2さまは」


 最近、ここに来たばかりの女の子と部屋を共有するハメになった。


 ボクより少しだけ背が高くて、青い目で、黒髪を後ろで一括りにしたこいつに……とにかくしつこく付き纏われた。

 うざすぎて、何回殺そうかと考えたし、実際に皮膚を薄く切ったりもした。なのに……こいつは…………


「なんで、ボクに関わろうとする?」


「だめ?」


「めんどくせぇ……もういい。寝る」


「ちょ、ちょっと〜!」


 毎日こんな感じだ。ほんと……なんなんだろう。

 それでも、悔しいけど実力は本物だ。


 ───黒雨組No.4『ラピスラズリ』


 それが、今もボクをポカポカ叩きながら揺さぶっている『瑠璃』の呼び名だ。


 強いのはボクも認める。なのに…………うざい。


「はぁ……お前、ボクを監視するために来たんだろ」


「そうだけど?」


「だったら、はっきり言わせてもらう。ボクはここが嫌いだ。こんな場所、潰せるならとっとと潰してやるところだ」


「………………」


 はぁ……やっと黙った。襲ってくるならとっとと来いと身構えたが、瑠璃はそうはしず、まじまじとボクを見てから、口にしたのは────


「クロってさ、なんで1人なの?」


「……は?」


「せっかくだし、仲良くしない?」


「…………は?」


 …………やっぱりこいつはよく分からない。誰かといてよかったことなんて、ここに来てから1度もないのに。


「いや、意味わからなねぇから」


「こういうのもなんだけど、瑠璃は強いよ? クロにはまだ及ばない……けどね?」


「だからどうしたってんだよ……もう、眠らせてくれよ……明日はまた行かなくちゃいけないんだしさ」


 もう、話す気もないから寝ようとしたが……瑠璃はまためんどくさいことを言い始めた。


「へぇ〜じゃあ、瑠璃も『同行』するね?」


「……あ〜めんどくせぇ……勝手にしろっ」


『同行』───指定の人との行動を無条件で許可する。


 …………黒雨組No.4『ラピスラズリ』の『この上なくめんどくさい』特権だ。


 ──────────────────


 -次の日の夜-


「はぁ……強いわ。No.4なだけはあるな」


「それNo.2さまが言っちゃうの?」


 血だらけになったボクと瑠璃の前には無数の死体があった。


「今日は……12人殺ったか」


「瑠璃は17人〜」


「ちっ……」


「なんで!?」


 ボクは2本のナイフと拳銃が武器だが、瑠璃は二丁拳銃。

 対個人ならボクが強いが、対集団なら瑠璃の方が少しは上だ。……少し、だけね。


「まぁ、29人は少しめんどくさかったから助かったよ、瑠璃」


「おぉ!? クロが名前で呼んでくれた! って事で、クロの名前も───」


「断る。早く行くぞ」


「……ちぇ〜っ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る