由莉は悶絶しました

 長すぎるので2弾に分けます

 第1弾はあの飲み物……?


 _______________


「はいっ。実はちょっと力が抜けて倒れそうなところでした」


「ゆりちゃん、それ大丈夫なの……?あっ、わたしもお腹空きましたっ」


 二人に確認を取ると阿久津は歩く足を早めた。


「では、遅くなりましたが昼ご飯食べましょうか。その後に行くところがあるので……少し急ぎましょう……はぁ…………」


 ご飯だと聞いて由莉もえりかも目をキラキラさせたが、最後の阿久津の言葉に明らかな呆れのようなものを感じ少しブルっと震えた。


(えりかちゃん、あんな阿久津さんの態度見たことないよ……)


(わたしも……なんだか誰かに会うのを嫌がってるような……)


 阿久津に気づかれないようにコソコソ話しながら付いていくと、すぐに目的の場所に着いたらしく足を止めた。


「由莉さんもえりかさんもあそこに来てからまだ食べてない料理だと思いますよ」


 由莉とえりかの視線の先には丸くてふちが焦げ目のついた小麦色で、真ん中が真っ赤なトマトソースで彩られ白く丸いものがいくつかついた物や卵や、焼かれたお肉が乗ってさらにそこからマヨネーズが満遍なくかけられた物など色々なジャンルのものが食品サンプルとして置かれてある。


「阿久津さん……これって…………」


「はい、ピザですよ」


「ピザ……?」


 由莉はその名前だけは聞いたことはあったが食べた事はなかった……いや、あの時は食べられない物なんだと諦めていた。えりかに至っては以前の記憶が一切ないから名前すらも聞いたのが初めてだった。


「とりあえず行きましょうか。昼過ぎで少し空き始めてるのですぐにいけると思いますよ」


 阿久津が席の確認をすると偶然1つテーブルが空いた所ですぐに座ることが出来た。


 テーブルを挟むように2つ長椅子があり、片方には由莉とえりか、もう片方に阿久津が座るとすぐに店員が水の入ったコップとおしぼり3つずつ持ってやってきた。阿久津はそれを流れるように二人に渡すとテーブルの端にあったメニューを開いた。


「さて、何を食べますか?何でも選んでいいですよ」


 二人もメニュー表を覗き込んだが、どれも魅力的すぎて決めれそうになかった。


「ゆりちゃん……どうしよ」


「うーん、私もわからないよ……阿久津さん、決めてもらってもいいですか?」


「分かりました。では……」


 委ねた直後に店員を呼ぶボタンを押した阿久津をみて「あ、絶対これにしようって決めてたんだ」とある程度の確信を得た由莉だった。

 間もなくして女性の店員がチェック表を持ってやって来た。


「ご注文をお伺いします」


「マルゲリータの……L1つ、照り焼きチキンのL1つ、それとコーラのMを3つ」


「かしこまりました」


 女性は軽く頭を下げるとそのまま戻っていった。


「すごく丁寧な喋り方なんですね……すごいです」


「店員はそういった作法もしっかり教えられますしね。これが一部の居酒屋とかになるとまた違ったりもするんですよ」


 阿久津の説明に由莉もえりかもすごく聞き入っていた。えりかは日常を覚えていない、由莉は外にすら出たことのない身だったからそういった話にはすごく興味があったのだ。


「あっ、そう言えばLって言ってましたけど……どのくらいの大きさなんですか?」


 由莉はLがlargeの略だとは知っていたが実際の大きさが分からず疑問に思っていた。すると阿久津は少し考えると両手を軽く開いた。


「これくらいですね」


「えっ……?大きくないですか?」


 机の縦の長さの2/3程の大きさほどに開いた阿久津の手を見てえりかは3人で食べ切れるか少しだけ不安になった。


「私もマスターに連れられて初めて来た時にも同じ事をされて驚きましたよ。そんな量食べられるのかって……けどですね、気づけばLサイズ2枚が気づいたら無くなってるんですよ。由莉さんもえりかさんも来たら分かると思います」


「……?」

「……そうなのですか?」


 疑問に思いながら待っていると先にコーラが運ばれてきた。黒い液体の中にこれでもかと気泡をグラスの表面に浮かべていた。初めて見るその飲み物に二人は興味津々だった。


「あっ、つい流れで頼んでしまいましたね。あそこでは基本水かお茶しか出してませんでしたから多分二人とも飲むのは初めてじゃないですか?」


「はい!今も少しワクワクしてて……じゃあ、お先に……」


「あっ、由莉さんあんまり強く吸いすぎると……」


 待ちきれなくなった由莉は店員が持ってきたストローをコップの中に入れると先を口でくわえて思いっきり吸い上げた。当然…………


「ぶほっ!?…………っ!!あ、あくしゅさん……くちのなかいひゃいです……」


 まず大量の炭酸を飲みすぎて吹き出しそうになりそれを堪えようと口の中で閉じ込めていたせいで無数の針で口内を突き刺されまくったような感覚が走り、さらに飲み込む時にも喉をやられて完全に悶絶し涙目になった。


 ___あうぅ……うまく喋られないよぉ…………


「ゆりちゃん、大丈夫……?」


「くひのなかがいひゃいよぉ(口の中が痛いよぉ)」


「そんな勢いよく飲んだらそうなりますよ。炭酸はそういう飲み物なのですから」


「……ひょりぇをひゃきにいってくだひゃいよぉーー!!(それを先に言ってくださいよー!!)」


 なるべく声を抑えた由莉の心の叫びが二人だけに聞こえるように響き渡るのだった。



_______________



夜に第二弾出す予定です

楽しみにしていてくださいね!

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