第2章 命を奪う理由

由莉は快感を味わいました

 オリジナル部分の製作完了……さて、ここからは少しだけ飛ばし気味で行きますよ!


 ようやく由莉があれをぶっぱなします


 それではどうぞ!


 ___________________



 それから2ヶ月、由莉は自分にできる限り厳しく、妥協を一切しずに特訓を重ね15kgの物を背負っても20km以上歩けるほどに成長した。この成長ぶりはマスターの想定を上回っていた。



(半年はトレーニングしないといけないと思っていたが……これだけ力がついたなら……そろそろだな)


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 そんなある日、いつも通り起きるとマスターから射撃場に来るようにと言われた。不思議に思いつつも僅かな期待を胸に来てみるとそこには由莉の愛銃のバレットM82A1があった。



「あ…あの、マスター。これは……?」



「由莉、2ヶ月間本当に頑張ったな。正直半年はかかると思っていたから、私も驚いている。」



「えへへっ、ありがとうございます!」



 由莉はマスターに褒めてもらい上機嫌になった。マスターに褒めてもらえるのはやっぱり嬉しいな〜



「ずいぶんと我慢させてすまなかった。基礎を怠って自分の身が守れないやつ程すぐに死ぬ。由莉にはそうなって欲しくなかったから基礎から徹底的に固めて貰った。」



「………」



 由莉は始めはすごく不服だった。すぐにでもあの子を撃ちたい、なのにマスターは絶対撃たせてくれない。……けど、今になって由莉にはその真意が伝わってきた。



(マスターは、本当は私の事を気遣ってくれてたんだ。来た頃の私だと……体力も力も全然無かったから……きっと不安だったんだ。)



 でも、今はこうしてマスターは自分の事を認めてくれた。それが堪らなく嬉しかった。そして、それに上乗せするかのようにマスターの口から遂に聞きたい言葉が発せられた。



「由莉、今日からは実際にこいつを使って訓練してもらう。存分に撃ちなさい。」



「あ……あぁ……!」



 マスターがバレットを指さしながら射撃許可が出て由莉は衝撃と喜びでうまく言葉が出せなかった。遂に撃てるのだ。あの銃を。そう思うと由莉はなりふり構ってられないくらい喜んだ。

 マスターはその様子を我が子を見守るかのような目で見ていた。一通り落ち着いたのを確認したマスターは由莉に双眼鏡を渡し、指さされた方向を由莉は見てみた。するとかなり先の方に未開封の缶が置かれているのが分かった。



「それじゃあ、あの的を狙って撃ってみなさい。」



「……はい!」



 由莉は元気よく頷くとバレットの元へ近寄っていこうとした。すると焦った声でマスターが由莉を止めた。



「待ちなさい、由莉」



「……?どうしましたか、マスター」



 由莉自身呼び止められる理由が分からないようで頭に?マークを浮かべていた。



「……これをつけなさい」



 マスターが由莉に渡したのはヘッドホンのような形をした耳あて(?)のようなものだった



「……あっ、すっかりイヤーマフ付けるの忘れるところでした……」



「……由莉、耳が死ぬぞ。絶対に撃つ時は付けなさい。あれは痛いぞ……。」



「はいっ……すみませんでした」



 マスターは実際にやったことがあるのか物凄く顔をしかめていた。それを見た由莉は絶対に外して撃たないと心に誓ったのであった。

 由莉は耳にイヤーマフを付けると再びバレットの元へ向かった。遠くから見てもすごくかっこいいフォルムだと思っていたが、間近で見るとやはり全然違うものがあると由莉は感じた。

 黒光りするその銃の荘厳さに由莉は一瞬目を奪われていた。自分がゲームで使ってたこの子がこんなに凄いのだと心の底から嬉しくなった。



「よろしくねっ」



 小声で呟くとすぐに準備に取りかかった。まず、由莉は50口径の12.7mm×99NATO弾をそこで初めて触れた。弾の長さは138mmと由莉の手のひらの長さとほぼ同じだったことに由莉はワクワクした。

そして、弾の直径は12.7mm。由莉の指より全然大きかった。そんな弾をこの子は撃てるんだ__そう思うと少しゾクッとすると共にうずうずした。

弾倉に50口径の弾を滑り込ませるとバレットに装着し伏射姿勢になった。この日のために寝る前の時間を使って練習したので、多少ぎこちないが形はしっかり出来ていた。

 右手でコッキングレバーを力いっぱい引いて給弾し、チークパットに頬をぺったりとくっつけながらスコープを覗いて照準を調整する。狙うのは1000m先の缶ジュースだった。マスターの意地悪……と一瞬思ったがそれでも絶対当てやる!と言い聞かせながら倍率を合わせ、照準を缶の中心よりほんの少し上に合わせた。

 左手で銃床にあるグリップをしっかりと持ち、右手でグリップを握る。

 そして、右手から人差し指だけを伸ばしトリガーに指をかける。そのまま指を少しだけ曲げ、ほんの少しの力で狙撃する準備をした。バイポットを展開させてあるから撃つことだけに集中できる。由莉は自分の意識が静まるのを待った。



 ___私はただ引き金を引くだけ。後はこの子が全部やってくれる。何も心配しなくていい。この銃を信じるんだ。今までゲームで一緒に戦ったこの子を。



「すぅ〜〜ふぅ……」

 目を閉じて1回深呼吸するとスコープからは目を離すことなくさらに引き金を絞っていく。そして____



「撃ちます」



 その瞬間、人差し指の第二関節をほんの少しだけキュッと力をいれた。バレットは由莉の意のままにその銃口から50口径弾をぶっぱなした。発射炎が網膜を刺激し激しい爆発音が耳に刺さる。撃った衝撃は由莉が考えてたよりも少し強かったせいか上手く受け流しきれず、小さい体を蹂躙し由莉は少し悶絶しそうになった。

 発射された銃弾は秒速900mという速さで一直線に進み、缶の中央をぶち抜いた。もちろんその缶は弾の威力に耐えきれず内容物を吹き出しながら爆散した。

 その轟音はイヤーマフを付けていたにも関わらず由莉の耳をつんざき、耳が痛かったがそれでも由莉はかつてない快感と興奮で足をバタバタした。

 ____撃ったんだ。私、本物のあの子を……!あの衝撃、あの銃声……そして何より目標に当たるあの感覚……!すごい、すごいよ!



「すごいじゃないか。まさか1回で当てるとはな。」



 初めての射撃に心を奪われていた由莉だったがマスターが声をかけると、すぐさまハッと我に返り立ち上がった。



「ありがとうございます、マスター!真ん中に上手く当てられて良かったです!でも……衝撃を受け流しきれなかったです……マスター、もっと撃ってもいいですか?」



「ああ、今日はいくらでも撃っていいぞ。」



「ありがとうございます!」



 由莉が再び伏射姿勢になってバレットを撃とうとしていた頃、マスターは少し思いを巡らせていた。



(この子……すごいセンスだな。まず一発では当たらない距離のはずだったが……ふむ……もうをやってしまうか?いや、由莉の精神がそれに耐えられる保障がない……もう少し様子を見る……か)


 _____________________



 それから3日間、由莉はひたすらにバレットと向き合っていた。ただひたすらに狙って撃つの繰り返し。始めは10回撃って1回外れるかどうかだった命中率を百発百中の所まで精度を格段に上げていた。動かない物に対してなら1500mでも絶対外さないと由莉自身も自負した。M82A1は由莉にとっては共に戦った戦友みたいなものだ。ゲームと現実の差は確かにあったが、その差もすぐに無くなり今では自分の身体の一部のようなものだった。

 それを間近で見ていたマスターは由莉のその狙撃技術、集中力のあまりの高さに少し失笑してしまっていた。そして、マスターはひとつの決断をした。



(をやらせるか……由莉、これを越えずしてスナイパーにはなれない……耐えるんだぞ、絶対に)



「阿久津」



「はっ、こちらに」



 マスターは阿久津を呼び出すと由莉に聞こえないように耳打ちした。



「……分かりました。そのように手配します。」



 あの子やらせるのかと阿久津は少し目を見開いたが、由莉の為だと、その準備のために射撃場を後にしたのだった。

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