第2話

「なんか文句でもあんのか、このゴミ」


「いえ、ありません」


「じゃあさっさと仕事して、今夜はあそこで寝ろ」


「……」


「聞いてんのか!」


「わかりました」


「おせえんだよ、この鼻くそが!」


上司は今度こそ立ち去った。


俺は上司が見えなくなると、目の前の空間を十発くらい殴ってから、客のところへ足を向けた。



日が暮れたころ、最低限の荷物を持って、おれは例の物件に足を入れた。


――ほんと、気味悪いんだけど。


俺は子供の頃から、お化けとかそういった類のものが苦手なのだ。


――こうなりゃさっさと寝るに限るな。


安眠できるかどうか不安でいっぱいだったが、無理やりにでも寝てしまおうと思った。


そして寝袋に入った途端、金縛りにあった。


――うそっ!


金縛りなんて十年ぶりくらいで、人生で二度目だ。


前回はただ金縛りにあっただけで何も見なかったが、今回は違っていた。


その全身がこれでもかと言わんばかりに青白い男が、上から俺の顔を覗き込んできた。


この顔は資料で見たことがある。

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