事故物件に泊まったら自縛霊がいた
ツヨシ
第1話
日本全国に、嫌な上司と言うのは珍しくないが、俺の上司もそのうちの一人だ。
理不尽と無理難題が実体化したような男で、俺はこれまでに何度となく殺意を覚えたものだ。
もちろん殺人はリスクが高すぎるので、実際に殺したりはしないが。
そんな上司が、また無茶を言ってきた。
それも事故物件に関わるものだ。
言い忘れたが、俺は不動産屋で営業マンをやっている。
「おい、例の物件はどうなっているんだ?」
こいつは例の物件が複数あったとしても、例の物件としか言わない。
そして「○○ですか?」と聞いて、それがこいつの思っているものと違っていると、罵詈雑言をあびせてくる。
仕方がないので俺はカンで答えた。
「あの自殺者が出たところですか。相場よりも安くしていますけど、まだ入居者はいませんね」
それを聞いたやつの目つきが変わった。
「おい、おまえまさか、自殺者が出たことを客に馬鹿正直に話しているんじゃねえだろうな」
「もちろん言っていますけど」
「馬鹿やろう。おまえ頭腐ってんじゃねえのか。そんなの黙ってりゃあいいんだよ。そんなこともわからねえのか、この役立たずが。それと家賃も相場どおりにしとけ。わかったな。このクズ。さっさと死ね!」
不動産屋は事故物件についての告知義務があるのだが、こいつはそんなことは知ったこっちゃないようだ。
言うだけ言うと上司は立ち去ろうとした。
が立ち止まり、ふり帰って言った。
「おい、あの物件だが、おまえ今日あそこで一泊しろや」
「えっ、あそこでですか?」
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