全プレイヤーPVP大会編
初イベント
それはある日の、またある晴れた(リアルは夜中)のEFOの世界。
「ようこそ!ゲームをお楽しみの皆様方!GMのサカタと!」
突如。
「キノシタでーす!」
それは、俺達の遥か上空に現れた。
元気の良い男女二人が、これまた元気よく登場。
空全てがモニターとなっているような感じである。なんだこれは。
「明日、ついに初の公式イベントが発表されます!」
「お見逃しなく!」
って告知かよ。いま発表してもいいんだけど。
「それでは!」
「それでは!」
そのまま、別れの言葉と共に元の空に戻る。
そんだけかって。
――――――――――――――
一時間後。露店巡りをしていた時だ。
「ようこそ!ゲームをお楽しみの皆様方!GMのサカタと!」
またかよ……
周りのプレイヤーも同じような反応である。
さすがに慣れちゃうよな。
「それでは!」
手を振るGM達。
やっと終わった……というか内容一緒なのか。
まあもう無いだろ。
―――――――――――――――
二時間後。
今日の獲物プレイヤーを探していた時。
「ようこそ!ゲームをお楽しみの皆様方!GMのサカタと!」
うるせえ……一時間毎にやんのかこれ。
よく見ると、周りが面白半分で矢や魔法を空へとぶっ放している。
懐かしいな、俺も昔はGMに向かって決闘申請とかしてたっけ――
「キノシタでーす!」
録画した映像を定期的に流しているだけなのだろう、反応がまったくな――
「うああああ!」
「ぐああああ!」
……ん?
「うおおおお!逃げろおおお!」
「逃げ――ぐあああ!」
見れば、あちこちで人が逃げ回っている。
それは空へと攻撃していた連中。
そいつらへと一直線に雷が落ちて、多くのプレイヤーを葬っているようだ。
「それでは!」
「それでは!」
笑顔で手を振るGMから、裁きの雷が降る様子は中々にシュールである。
周りも面白がって攻撃を仕掛けるせいで、止まることもない。
平和な世界に、突如降りかかる雷鳴。
逃げ惑うプレイヤー共。
この世の終わりかな?
その後、時刻が日を跨ぐまでGM達の告知は続いていったのだった。
―――――――――――
「イベントだー!」
俺が朝ご飯の支度をしていると、そう叫びながら階段を降りてくる妹。
イベント?ああ、EFOか。立花の事だもんな。
昨日の告知と言う名の惨劇から、何かある事は知っていた。
「何かやるのか?」
俺は単純な好奇心でそう聞く。ネトゲにはお決まりだ。サービス開始からしばらく経った今、何かあってもおかしくない。
というか何かないとおかしいね。
「うん!何と何と!全プレイヤーでの武闘大会が実施されまーす!はい拍手!パチパチパチ――」
立花よ、テンション上がりすぎてキャラがわけわからん事になってるぞ……
それにしてもPVPが初イベントとは。中々珍しいんじゃないの?
俺的には特別モンスターとか特別マップとか思ってたわ。
「……確かにそう書いてんな。まあどんなプレイスタイルがあるか分かる良いイベントだ」
手元の携帯でEFOの公式メンバーサイトを見れば、馬鹿でかい告知が載っている。
全プレイヤーでの武闘大会。ソロにも優しい一対一のバトルで行う。レベルやスキル、装備差も考慮されるらしい。
一週間に渡り、参加者はレート形式で争う。
レート対戦は一日10回まで。合計最大70回戦えるわけだ。
そしてレートの上位64名が、決勝ステージへと進出。決戦形式はトーナメント方式。
このトーナメントはEFO全域で放送される。そして公式ページにも動画がドーンと出るらしい。
まあそりゃ運営の狙いはプレイスタイルの公開だろうから当然。
ちなみに生で試合を見る事も出来るらしい。これはスリが捗りますねえ……
「うわあお兄ちゃん悪い顔……」
引くな引くな。
そしてお馴染み景品達。
参加者には参加賞が配られ……上位64位、つまり決勝進出者には豪華景品が贈られる。
上位8位には更に豪華景品。ベストスリーには更に更に豪華景品。
優勝者には更に更に更に豪華景品。
景品については大会当日発表と。楽しみですね。
豪華景品か……
「もう来週から始まるみたいだよ!いやあ楽しみだなあ」
うん、確かにそう書いてるわ。
来週からか……いや、当然参加しますよはい。
まだ見ぬ強者と戦えるんだ、凄く楽しみですね。自分の力がどれだけ通るか分かるし。
「へへへ。ま、ま、マジ震えてきやがった……」
バイブレーションしながらそういう立花。誰だお前。
ただ立花も相当楽しみらしい。丁度テストも終わったし、始めようと思った時にこのイベントだしな。
運営は学生さんか何かかな?なんちって。
「まあまあゲームも良いけど、テストの出来は大丈夫か?」
「だ、大丈夫でーす!んじゃ行ってきまーす!」
逃げるように出て行った妹を見送り、俺は再度イベントの発表ページを見る。
「イベント、か」
ネトゲには定番だが、久しぶりだからか凄く楽しみだ。
ただまあ、一つだけ。
「昨日の告知、必要あったか……?」
まあいっか。
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