昇進ミッション

《ラロック・アイス・シティでログインしました!》






ログイン。どうやら、このラロックアイスにも結構プレイヤーが集ってきたようだ。




サービス開始から早二週間ほど。恐らくだが、始まりの町からここへはかなりレベルアップが早く出来てるんだろう。




しかしレベルが15を超えたから中々レベルが上がらなくなってきた。昨日でようやくレベル20だよ……ここからどんどんレベルアップが辛くなってくるな。




ネトゲはレベルカンストから本番とはよく言われてきたが……実際、カンスト者が出て来るのはいつになるんだろうか。






まあいいや。スリでもしながらまたスノウフィールドに行こう。プレイヤーが増えたおかげで大分スリもやりやすくなったからな。いやあおいしいおいしい。




よーし、今日はちょっとだけスリしてから新しい武技でも試すか!






「おい」






しばらく考え事をして、やる事が決まって……スリのカモを探そうとした時だった。




俺は、背後から声を掛けられる。凄いデジャブだ。この声、この感じ。間違いなく闇ギルドのあの人。




振り返ればやっぱり黒いローブ。……なんでわざわざここまで?






「お前に急ぎで仕事を頼みたい。ギルドに今すぐ来い」






《闇ギルドに移動しますか?》






すかさずインフォさん。まあいいけど、急だな。




俺のレベルは20。恐らくこれに関係するんだろう。




……まあ大体わかる。やっと『見習い』が取れるんだろうか?俺も結構悪事を働いてきたと思うしな。




いやあ長いようで短かった。




ついに俺も……






「……」






俺が少し浸っていると、その間目の前でじっと待っている黒ローブ。




これ俺が返答選択するまでこのままなのか?ちょっと面白いな。






「……」






まあいじめるのも止めてあげよう。『はい』っと。






「そうか。それなら向かうぞ」






俺が黒い結晶を選択するまでもなく、勝手に俺の身体はワープしていくようだ。






―――――――――――――






「よく来たな。お前の活躍はよく耳にしているぞ。良くやってくれているようだ」






俺が闇ギルドに転移するなり、見たことのない顔が俺に話しかけてくる。




褒められたよ、うれしい。好きな事やってるだけなんだけどな。




ローブを被っているが……感覚で分かる、コイツは中々強そうだ。






「……どうも。で、仕事ってのは?」




疑問をそのまま口にする。




「――あるモノを盗んで来い。詳しくはこの指令通りだ」






強キャラローブは、そう言って一つの巻物を俺に渡す。




うーん、何か闇の仕事っぽくていいですね。






「準備が整ったら、それを開くと自動的に開始するようになっている。期待してるよ」






なるほどな、もしかしたらクエスト限定マップなのかもしれない。




いやあ楽しくなってきた!






――――――――






前と同じ失敗はしないようポーション類は忘れない。




準備ばっちりにしたところで、俺は巻物を開く。




えーっと、確かこれを開けば良いんだな……






「うおっ」






瞬間、俺の周りの風景が真っ白になり……景色が一変していった。








――――――






「どこだここ」






そんな言葉が漏れてしまう。




周りは森。そして先に一本道。そこ以外進むなと言わんばかりに。








□□□□□□□□□□□□□




お前には、その進んだ先にある屋敷からあるモノを奪ってもらう。




幸い今家主は出掛けており、今が恰好の機会という訳だ。




奪ってくる品は地図に示してある。奪い次第即刻帰還しろ。




これまでに得たスキルを存分に働かせて、失敗のないように。




奪った後の帰還、また途中で中断する時は転移結晶を使え……以上だ。幸運を祈る。




□□□□□□□□□□□□□






俺の手元には、そんな事を記された巻物が一つ。そして簡素な地図と共に家の間取りの図が一つ。






なるほどなるほど、いかにも盗賊っぽいクエストだ。




どっちかというと完全に泥棒だけどまあ一緒か。








少し歩くと、指令通り小さな屋敷のような建物が見えた。




本当の本当にクエストの為だけの限定マップなのだろう、それ以外の建物は一切ない。






「まずは地図を確認と」






この屋敷は大きめの二階建てで、図を見るとその二階の中のある一部屋に盗む品があるよ、と示されている。




入り口は一階に玄関と窓が二つ。普通の間取りだ。結構丁寧に教えてくれているが……本当に『間取り』だけ。




後は自分で確かめろって事ね。






「さて、どうすっかな」






順当に行くとするなら一回の玄関もしくは窓から侵入だ。




恐らく鍵開けスキルはそれに使うんだろう。




そして二階へと行き指定の品を確保、脱出だ。






……しかし恐らく、そんな一筋縄に行くわけがない。




中には執事か用心棒か家政婦か分らんが誰かがいるはず。




そいつ等をどう回避して品にありつけるかが肝だと思います、はい。




バレないようにやり過ごすか、NPC全員ヤってしまうか。俺なら前者だな。






だって盗賊だし?






「うーむ」






……それを考慮してのもう一方の方法は、二階から『直接』侵入する。




見た所、その品がある部屋にも窓がある、可能っちゃ可能だ。




もし成功すれば、直接その部屋に侵入出来るからクリア余裕だ。




どうせなら滅茶苦茶やってやりたい所。




正当な一階からの侵入がプランA、二階からの侵入がプランBということで。






「プランBで行こう」




即決。




やってやろうじゃないか!


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