生産職っていいものですよ?

《ラロック・アイス・シティに移動しました!》






「ふう」






帰還。




スリで得られた金額は3万azl。あいつどんだけポケットマネー持ってんだっての。




それでも、落とし穴作製の時間とか大量のナイフや間食の金額を考えれば微妙か。






でもまあ刺激的で素敵な時間だったから良し。




アイツらの悔しがる顔を想像すると楽しいね!




性格悪いって?褒め言葉だな。




……ん?




「……これは」






□□□□□□□□□□□□□




【毒のアイアンナイフ+1】




ATK+25 敏捷値+25 属性[毒]  耐久値130 必要敏捷値20 




強化品・属性[毒]付与品。




鉄から造られた小刀。




初心者にも扱いやすく、切断、突き、投擲等様々な攻撃に用いる事が出来る。




攻撃成功時、一定確率で攻撃した対象に[状態異常:毒]を付与する。




品質:2


レアリティ:2




製作者:――






製作者コメント:――




□□□□□□□□□□□□






いつもの露店巡りを始めてすぐ、俺はコイツに出会った。




『毒』……なんと素晴らしい響き。




この武器は何とお値段100000azl。流石にぼったくりだろ……




しかし、属性の付与された武器なんて今まで見たことがない。




名前を隠しているのは、恐らく生産職の方々から狙われるからだろう。




自分の技術は独占しておきたいもんだ。






……どうする、金貯めるか?いや10万だぞ、この序盤に。






カンストした後の武器ってのはいくら払ってもおかしくないが、こんな最序盤で取得する武器は程々がいいってもんだ。




いやいや、でも気になっちゃうぞこれは。




……EFOでの稼ぎについて考えてみよう。




俺は恐らく、盗賊という職業柄戦闘職にしては稼ぎやすい部類の職業だ。




スリによる稼ぎは中々のもので、恐らくこれまでに結構な額を稼がせて頂いている。レベルが上がればもっと増えるだろう。




それでも、稼いだ総額としては10万もいかない。そしてポーションや武器等必須品を買っていると無くなっていく。




要するに、今の稼ぎで10万等中々稼げない。そしてその額を払って得られるのがアイアンナイフではな……




なら、どうするか?




俺が作ってしまえばいいんじゃないかな。






――――――――――――――








生産の道は険しい。




これまでの俺のネトゲ経験から、個人的に生産職の辛い事を書いていこう。




1、採取しんどい。




生産職の基本、採取。




素材の採取作業ってのは、時間を食う上単純作業だ。




草を採るのも、鉱山でピッケルを振るうであったりな。刺激が中々ないのだ。




最初の内は新鮮でいいだろう、だが時期に辛くなってくる。




そしてその間にモンスターでも狩っていた方がいいんじゃないかとか思えてしまう。




プレイヤーから素材を買えばいいって?確かにその通り。




だがそれは、金持ちだけが言えることだ。最初の内は嫌でも自分で採取しないと金が足りないだろう。




……しかし、採取を楽しく思えるプレイヤーも案外結構いる為、そういうプレイヤー達は問題は無いな。






2、売れない、売れても稼ぎが少ない。




生産職というのは、かなり競争が激しい。




同じもので、値段が安い方と高い方、どっちを買うか聞かれ高い方を買う奴はいないだろう。




同じものでも高く売る術を持っているプレイヤーもいるが……まあそれは例外で。




……まあつまり、精魂込めて作った武器でも、それより安く優秀な武器があれば客はそっちに行ってしまう。




結局値段を下げて、満足な見返りを得られない事が殆どだ。




しかし、この世の中には『大当たり』を引く者が居る。




現実にも同じような覚えがあるだろう。




誰も作れない物を自分だけが作れるとなれば、懐に入る銭の額は計り知れず。




そしてサービス開始直後の今、あらゆるプレイヤーにチャンスがあるのだ。




それを夢見て生産職の皆様は血眼で頑張っている。頑張れ生産職!




まあ後は……お得意様が出来たり、クランやギルドの中での生産担当とやっていけたりすれば、結構安定して稼げたりするな。




3、スキル上げきつい。




当たり前だが、良い物を作るにはそれ相応な技術が居る。




レア素材等の高級素材を調理出来る様になるのにも勿論必要である。高級素材を低い技術でどうこうして、ゴミが出来たらそれこそ最悪だ。




その技術こそがゲームのスキルであり、それを上げていくのも辛いのだ。上げるに当たっては1,2の通り時間と金がいるしな。




生産職一筋でなく、戦闘職の傍らに生産をしようとするプレイヤーも居るが……結局買った方が良くね?となってしまう理由がこれだ。




まあこれは生産職一筋ならあまり足枷にはならないかもね。勝手に上がってるし。






――――――――――――――




少し考える。




……まあその、生産職の皆様は大変なんだ。




ぼったくりなんて言ってごめんなさい。




そんな『生産』というものに安易に足を踏み入れるべきか迷ったが……まあ何事も経験してみないとね。




何て言ってもこれはVRMMO。俺の知っているMMOとは違うのだ。




ちょっと興味あったし失敗してもそこまで損害は無い筈、多分。






そうと決まれば早速、生産職を取得しに行きましょう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る