生産職っていいものですよ?②

――――――――――






ラロックアイスのマップは広い。


なぜ広いかと言えば、恐らく『生産エリア』が影響しているのだろう。




豪華な事にラロックアイスでは各生産職ギルドが存在し、しかもその職業で固有の作業場までついてくる。






その生産エリアの入り口に存在する、生産ギルド。


恐らくここで、生産職の説明と、どれに就くのか決めるのだろう。


俺は、生産ギルドへ足を踏み入れた。






《生産ギルドに移動しました!》






「生産ギルドへようこそ!初めていらっしゃったようですね、この場所について説明致しましょうか?」




中に入ると、生産ギルドの制服?を着たNPCのお姉さんに声を掛けられる。名前は生産ギルド職員となっている。名前付けてあげて。俺の鑑定レベルが低いだけかな?




何かNPCに説明されるのは新鮮だな。今までインフォさんだったのに。


闇ギルドの連中も見習ってくれよな……






「ああ、お願い」




「かしこまりました!」






うんうん、元気でいいな。


元気、か。あの元気なカオリは元気にしてるだろうか。




「まず生産ギルドでは、お客様からの依頼……生産クエストが受託出来る事が一番の特徴です」




俺が会えてないフレンドの事を心配していると、容赦なく説明するNPC。




うわあちょっと待って。


はいはい、クエストが受託出来ると。




「そして、生産職に就くのには生産ギルドで登録を行わなければなりません。登録には10000azl頂いております」




金取るのか、まあしょうがない。




「生産職は、戦闘職とは別であり、生産職に就いても戦闘職を辞めなければならないという事ではないのでご安心下さい」




うん、もし盗賊辞めなきゃならないのならやらないわ。




「現時点で貴方が就くことの出来る職業は……農民、薬師、料理人、裁縫師、錬金術師となっております。お決まりであれば、その職業の登録を行いますのでお申し付け下さい」




ふむふむ。




「その他、何か聞きたい事があればお聞きください」






聞きたい事ね……






「毒作りたいんだけど、どの職業がお勧め?」






こういうのは、単刀直入が一番だよな。




「……」




あ、固まった。




「……毒であるなら、薬師か錬金術師がお勧めです」




少しフリーズしたものの、しっかりとNPCとしての役割を果たしたようだ。






「ほう、毒と言っても毒薬を作りたいんだ。それぞれどんなのが作れるのが教えてくれ」




「……まず薬師については、主にポーションを作製出来るのが特徴です。その他にも様々なバフ能力を付与出来る薬を作製する事も出来ます」






なるほどね、薬師はそのままの意味でいいと。




「錬金術師に関しては、薬師とは異なりこの世界のあらゆる物を取り扱う事になる職業になります。非常に難易度の高い職業でありますが、ありとあらゆる物を作製出来ます」




ふむふむ。俺は研究をしたいわけじゃないからな。




うん、確定。






「それなら薬師にしよう。手続きはどうやればいいんだ?」




「10000azlを支払って頂ければ、薬師ギルドへと登録を行います」






簡単だな、ゲームだから書類の手続きとかないから便利でいいや。




「ほら、これでいいか」




「お預かりします、……おめでとうございます。登録が完了致しました」






《おめでとうございます!貴方は薬師となりました!》




《薬師となった事で、薬師スキルを取得しました!》






「えっ」






……かなりアッサリと。




俺は薬師となった。






―――――――――――――――――






「……これからのアドバイスは以上です。それでは良い生産の道を歩んでください!」




あれから、色々と生産初心者に対してのアドバイスを聞いた。




採取はどうやってやるのとか、調薬作業はどうやるのとか。




あああと、薬師レベルが上がれば作れる物が増えていくのだがレシピは自分で考えて行かないといけないらしい。中々難易度高いよね。




「ありがとな、良い毒作ってくるよ」




「……いってらっしゃいませ」




心なしか引き攣った笑顔のお姉さんを後にして、俺は『採取』へと向かう。






――――――――――――――――――――






ラロックアイスは広い。




それは何故かと言えば、生産職用の戦闘?エリアが展開されているからだ。


よく意味が分からないって?確かにな。






《ラロックアイス・ギャザーエリアに移動しました!》






ラロックアイスシティを北に抜けた先がここ、ギャザーエリアだ。




鉱山のような場所が遠くに。色とりどりの植物達が雪の景色を彩り、また暖かそうな毛皮を纏った動物達も。




目の前には、広大な自然が俺の前いっぱいに広がっている。








先程の受付のお姉さんの説明によれば、ここは生産職のための採取のためのエリア。


非戦闘、アクティブモンスターも居ない。




採取やりたい放題、採取のバーゲンセールである。




流石生産のエリア、生産初心者に物凄く優しい。


しかしここで採れるアイテムはそこまでレアなモノはない。作れるアイテムも初歩という訳だ。






ここで最初の一歩を踏み込んだなら、戦闘エリアで本格的な採取をしようって事だろう。








「あっ、見て見て!綺麗な花が咲いてるよー!」


「ふふ……そうだね」






案外ここは、男女が多い。


非戦闘であり、また綺麗な植物や静かな動物達だらけ。




良いデートスポットですね、良かったですね。爆発しとけや。






「おっ」






〈レッドハーブ〉






雪原に、目立つ赤の植物。




早速あれを刈り取るとしよう。




俺の致命ナイフが火を噴くぜ!






《レッドハーブを入手しました!》




《採取スキルを取得しました!》




ゲット。




□□□□□□□□□□□□□




【レッドハーブ】




調薬する事により、HPを回復する能力を持つ薬草の一つ。




品質:1


レア度:1




□□□□□□□□□□□□□




俺の想像とまんまである。




□□□□□□□□□□□□□




≪スキル説明:採取≫




レベルが上がると、採取が上手くなり採取する事の出来る素材が増える。




□□□□□□□□□□□□□




採取スキルは説明これだけ。分かりやすい。




よーし、この調子でどんどん採っていこうか。




――――――――――――――――




《薬師レベルが上がりました!》




《採取レベルが上がりました!》




《薬師レベルが上がりました!》






取り合えず、適当に歩きながら薬草っぽいものをかき集めた。




レッドハーブにブルーハーブ、グリーンハーブ。


ブルーハーブはMP回復、グリーンは単体では意味はなく、何かと組み合わせて用いるものらしい。




そして……俺の中で一番欲しかったモノがこれだ。






□□□□□□□□□□□□□




【パープルハーブ】




毒草ではあるが、解毒薬の材料でもある。




品質:1


レア度:2




□□□□□□□□□□□□□






いやあなんて美しい紫色ですこと。




これは結構レアで、比でいえばレッドハーブ20個取れたらついでにパープルハーブがやっと一つぐらい。




毒草ではあるがなんて謙虚な物言いで。




毒として使うに決まってるじゃないか。




いやあ疲れた。




「くー!」




疲れた体にスタミナドリンク。




効く効く。




もうちょっと頑張ろうね。






―――――――――――――――




《採取レベルが上がりました!》




……疲れた。




まあでも、俺は単純作業は好きだから苦ではないな。




パープルハーブも十個ぐらい集まったし。




さて、それじゃ早速薬師ギルドに向かうとしようか。




毒の道へ、さあ行かん!






―――――――――――――――――――――――






《ラロック・アイス・シティに移動しました!》






ラロックアイスの生産エリア。




様々なギルドが並び、沢山の生産職達が見事に景観に溶け込んでいる。




THE・生産。




俺もこの風景の一部に溶け込む事になる……そう考えるだけで、胸が高鳴ってしまう。




金は十二分に持った。




材料も結構な量を採取した……準備はいいだろう。






一目でわかる、ポーションの絵が描かれた看板の建物に足を踏み入れる。






《ラロックアイス・薬師ギルドに移動しました!》






そこには、調薬に必要な材料が立ち並んでいる売店とNPC。




また多くのプレイヤーが作業場で自分の作業に勤しんでいる。




早速取り掛かりたい……が、まずは売店で調薬に必要なものを買う。






《調合水×20を購入しました!》




《空き瓶×20を購入しました!》






調薬に必須なのがこの調合水。




これに色々と手を加えていくのが基本らしい。普通の水では出来ないとの事。まあお決まりだな。




そして出来た薬の容器が空き瓶。以上。




二十個もあれば大丈夫だよな……?






ま、まあ取り合えず、HPポーションでも作ってみよう。






俺は空いている作業台の前に座る。




作業台は、調合に必要なものが大体揃っている便利なものだ。俺達は材料だけ持っていけばいいって事よ。




ただまあ、作業道具もまたレアなモノが後々出たりするんだろう。当然これは一番ランクが低い奴ね。




さて……アイテムボックスを開き、そこからレッドハーブに調合水、空き瓶を出して作業台に置いてと。




「まずは火だな」




何をするにも、火が必要だ。現実なら色々と面倒くさいのだが、これはゲーム。かなり簡単。




まずこの作業台の横についている捻りをグイっと回す。




そうすると、作業台に描かれている魔法陣が紅く輝き……ボワっと炎があふれる。




「よし」




俺は鍋に調合水を少し投入。備え付けの金網を設置して、鍋を置く。




完全に焼肉店のアレさながらだ。お肉焼けそう。




水が沸騰したら火を弱め、レッドハーブを投入!




「……」




棒で潰すように混ぜ、完全にレッドハーブが溶けたら、ポーションの色に近くなるまで水を少しづつ加えながら混ぜていく。




ひたすら入れて、混ぜる。もうちょっとかな?お、そろそろ……火を止めてっと。




完成したものをガラス瓶に入れれば――






《『HPポーション(小)』の作製に成功しました!》




《『HPポーション(小)』が作製リストに追加されました!》






よしよし、完成。




□□□□□□□□□□




【HPポーション(小)】




飲むとHPを110ポイント回復する事が出来るポーション。




品質:2


レア度:1




□□□□□□□□□□□□□□






見れば、やはり製造品はNPCのものより品質が上のようだ。




回復量もNPCのものは100、製造品は110と高い。




もっと質の良いポーションとなると薬師スキルレベルを上げないといけないのだろう。






というか……楽しいなこれ。嵌っちゃいそうだ。




毒薬までの練習って事でさ。






もうちょっと、もうちょっとだけ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る