今日は、初めて仲間とPKをしました。
――――――――――――――――――――
《始まりの草原に移動しました!》
やってきました。
サービス開始から時間が経っても尚、ここは人が多い。
今も尚新規者が多いからな、人気みたいだしEFO。
フィールドがバカでかいおかげで問題ないだろうけど。サービス開始ぐらいの時は、ここが埋まってたが。
しかし俺達を超えるレベルの奴らは、あまり見かけない……恐らくここを超えれば別のフィールドが待っているんだろう、楽しみだ。
「……」
歩く中横で、黙ったままのカオリ。緊張してんな。
まあ、今はPKだ。かなり進めば、俺達以上のレベルのプレイヤーがちらほら居る。
狙うのは……出来るだけバランスの悪く防御の低いPTだ。
後衛中心のパーティとかだったら理想なんだけども、いないよな。
盾持ちは出来るなら避けたいが……お?
「今のうちだケン!アイ!」
「任せて……ウィンドアロー!」
「ファイアーボール!」
見れば、槍使いに弓使い、魔法使いの三人のPTが遠くに見える。
レベルは全員10。槍使いがタンク兼アタッカー、後衛二人がアタッカーか。回復はなし、盾役も微妙と。ここ重要。
槍使いの装備はカオリのような重装備ではなく……敏捷と体力をバランスよく取ったような装備。都合がいいな。
後衛二人は言わずもがな柔らかそうだ。
周囲には……フィールドが広いだけあってあまり他のプレイヤーは見当たらないな。
「カオリ。あいつ等だ……行けるか?」
「は、はははい!」
噛み過ぎだっての。
「いいか、優先度は回復キャラを最優先、後衛を次、前衛の順番で狙うんだ」
例外はあるが……基本はこうだろう。
「わ、分かりました、じゃああの二人を先に、ですね?」
「ああ。恐らく魔法か矢が飛んでくるだろうが……無理に避けるな。そのまま突き進め」
カオリの重装備ならある程度は大丈夫だろう、タブン。
「何、俺が出来るだけ攻撃を受けるようにする。お前は全力で突撃すれば良い。いいな?」
そう言って、俺はカオリの肩を叩き笑って見せる。
「はい!」
うん、良い返事。
「……おっと、その前にカオリ、名前の表示切っとけよ」
初期設定のままなんだろう、カオリは堂々と頭上に自分の名前を見せている。
俺は最初にMPKした後に直ぐ名前表示を切っておいた。というかその時は冷静じゃなく、切るのを忘れていた。しくじったなあ……
「あ、そうですね。えっと、これで」
消えるカオリの名前。
俺は顔をお面で隠し、笑みを浮かべる。
さあ――楽しいPKの時間だ!
「っふふ、可愛いですねそれ、ふふ」
……締まらねえ!
――――――――――――――
「んじゃ俺が向こう側に行く。お前の方を見た後直ぐに俺が出る。相手が俺に気付いたらお前が出る。いいな。後強化魔法も忘れずに」
「……はい」
「二段突き!」
「ウィンドアロー!」
「ファイアーボール!」
獲物に夢中になっている内に、疾走スキルを使って遠回りに移動する。
「……ふう」
バレた素振りはなし。行けるな。
っと、疾走スキルのクールタイムを待たないと。
……よし。
「……!」
カオリに視線を送ると、頷く。
初撃はどうする……魔法使いに『スラッシュ』か?いや、武技は発動すればキャンセル出来ないだろう。
普通で良いか。
……行こう。
「失礼」
疾走を発動、猛スピードで近付き、一番近い魔法使いにナイフを突き立てた。
詠唱を開始した直後なら動けまい。
「ファイアーボール――ぐっ!!何だよコイツ!」
不意打ちだからだろう、魔法使いのHPバーは大幅に減る。あと7割。
「何――PKか!」
「こっこの、ウィンドアロー!」
一斉に気が付き、魔法使いは槍使いの後ろへと逃げる。
俺が追撃をしようと追えば、同時に攻撃を仕掛ける弓使い。
弓使いは俺の脳天に、風を纏った猛スピードの矢を放つ。
俺は矢の射線を読み、回避。
左耳の横をすり抜けていく風の音は、当たればかなり不味い事になると勘付かせる。
「らあ!」
間髪いれず、槍使いは前に出て俺に攻撃を仕掛けてくる。
武技では遅いと判断したのか、通常通りの攻撃だ。良い判断だろう。
槍使いの攻撃に、俺はまともにやりあわず距離を取る。
……今回は、一人じゃないからな。
「――――!」
オーラを纏った鎧の巨体。
それが、勢いをつけて近付いてくる。
それに最初に気付いたのは……魔法使いだった。
槍使いと弓使いが俺に迎撃、魔法使いは詠唱の間に回りを索敵といった感じか。
俺以外に敵が居るという考えは大正解だ。潜伏していてもこれじゃ無駄だったな。
「ひっ……フ、ファイアーボール!」
気付くと同時に、恐怖の引き攣った声と詠唱。
恐怖に対抗しながら、なんとか魔法使いは魔法の照準を合わせ……詠唱完了を待つ。流石に詠唱速度が速い。
しかし……その詠唱が大きく遅れたのを、俺はしっかりと確認していた。
普通なら間に合わなかったが……これなら俺の攻撃で詠唱をキャンセル出来るだろう。
あの魔法を、カオリに直撃させるわけにはいかないからな。
「させるかよ!」
「この!」
魔法使いに攻撃を通させないよう、槍使いは俺に攻撃を仕掛けながら進路を阻み、弓使いは弓を引く。
俺のフェイントに、見事こいつらは引っかかってくれた。
……俺が、近接攻撃しかできないと思ってるのか?
「よっ」
俺は右手に持つナイフを――投擲する。
焦らず、慎重に。大丈夫、相手は止まってるんだ。
「がっ!!」
脳天に命中。詠唱も破棄された。投擲強いわ本当。
……あと、体力は半分か。後は行けるな、カオリ?
「――!」
猛進を続けるカオリ。もう魔法使いは目の前だ。
「不味い――」
「うっ、ウィンドアロー!」
槍使いは魔法使いの前に出ようとするが、もう遅い。
弓使いの攻撃でも、止まらない。
巨体から振るわれる、その大槌は――
「くっ、そ……」
地面に残る跡と、消え行く魔法使い。
「――」
カオリはそのまま弓使いへと攻撃をするようだ。
「っ、近付くな!」
「パワーアロー!」
槍使いがカオリを阻むよう迎撃の体制。
弓使いは俺とカオリに攻撃という感じだろうが……今はカオリに集中してんな。
カオリと槍使いがにらめっこをしている間に、弓使いは後ろから大きく弓を引き、攻撃しようとする。
あの長い溜めは恐らくダメージ重視の攻撃だろう、当たれば不味いよなあ。
使ってみるか……『関節技』。
「ちょっと失礼」
疾走スキルを再使用する。
気付かれる隙も与えない。
一瞬で弓使いの背後に回り――弦を引く手を強引に外し、自分の胸へと引っ張って。
カオリに必死な弓使いは俺に気付く事が出来ず、結果されるがままである。
そしてそのまま背中に回し、担ぐように。
「な――!」
これで肩と腕は極まった。見れば、弓使いのHPバーが減り続けている。
流石に痛覚は抑えられているだろうから、安心して極められるな。
行動不能とかの状態異常扱いなのだろうか?
「くそっ、アイを離せ!」
哀れな弓使いを助けるべく、こちらに向かう槍使い。
その思いは良いが、敵に背中を見せたのは大間違いだったな。
「――」
容赦なくカオリのハンマーは槍使いの脳天を打つ。
わーお、一撃だ。
「くう……やられた」
そう言い、身動きの出来ない弓使いも後を追ったのだった。
《レベルが上がりました!任意のステータスにポイントを振ってください》
《レベルが上がりました!任意のステータスにポイントを振ってください》
《レベルが上がりました!任意のステータスにポイントを振ってください》
《投擲スキルのレベルが上がりました!》
《小刀スキルのレベルが上がりました!》
《関節技スキルのレベルが上がりました!》
《潜伏スキルのレベルが上がりました!》
《疾走スキルのレベルが上がりました!》
《名声ポイントが低下しました》
《PKペナルティ、第一段階が発動しました。貴方をPKしたプレイヤーはPKペナルティを負わなくなります》
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