スキルの確認と、作戦会議

俺の前で、戸惑う素振りをするカオリ。


「ん?どうしたカオリ」


「いやいや、急すぎませんか?」



善は急げって言うじゃないか。悪だけど。



「まあ実を言うと、その闇の職業はレベルを上げるだけでは解放されなくてな。その解放条件とやらは、どうやらプレイヤーキルをする事みたいなんだ」



もしかしたら他にもあるかもしれないが……俺は少なくともそうだからな。



「成程。わ、分かりました!私……やってみます!」



カオリの決意を感じる声。


冷静になってみると、なんか俺凄い悪い事してないだろうか。無垢な少女?を悪の道に、だぞ。


……悪行ポイントくれない?



――――――――――――――――――



「さて、取り合えずスキルとアイテムの見直しをして、戦いに備えようか」


「はい!」


俺は見習い盗賊になってから……いや、昨日のレベルアップ後も何も確認していなかった。


スキルも色々成長してるし、ここで整理しておこう。


えっと、ステータス欄のスキルを注目すれば……


□□□□□□□□□□□□□


≪スキル説明:小刀≫


小刀を扱った攻撃にダメージボーナスを与える。


レベルが上がる毎にボーナスは増え、またレベルに応じた武技を扱えるようになる。



≪現在扱える武技≫


スラッシュ:消費MP10 クールタイム10秒


対象を小刀で素早く斬り付ける攻撃を行う。


攻撃力と敏捷値に依存したダメージを与える。



□□□□□□□□□□□□□


出た。おいおい武技とか使えるようになってたのかよ!


そういや昨日、インフォさんが教えてくれていたような気がするな……無視しちゃったけど。というかどうやって使――


《武技についての説明を開始しますか?》


うわあびっくりした。


ああ、この画面を初めて見た段階で起動するようになってるのかな。


『はい』、と。



《武技は、発動条件として武技に対応した武器を装備する必要があります》



ふむ……当たり前だが、大剣背負って小刀の武技は使えないと。当たり前か。



《魔法のように詠唱は必要なく瞬時に発動します。発動の際は、通常のスキルと同じで攻撃と同時に武技名を口に出すか、頭の中で唱えると発動します》


ふむふむ、まあ大体予想通り。疾走スキルとほぼ同じだな。


《以上で説明を終了します》


このスラッシュは、なんと敏捷値も依存するようでかなり使えそうだ。


ただMPが全然ないから連打は出来ないな……




□□□□□□□□□□□□□


≪スキル説明:スリ≫


悪の職業専用スキル。NPCかプレイヤーを対象とし、対象に触れた状態で発動する事が出来る。


成功した場合、対象に応じた額のazlを奪う事が出来る。


対象の警戒心が低い程成功確率は上がり、また奪った対象に連続でスリを行う場合、回数に応じて成功確率が低くなる。


また失敗した場合は対象に気付かれる事になる。


レベルが上がると、成功確率と奪える額が増えていく。


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≪スキル説明:ピッキング≫


悪の職業専用スキル。


発動し成功した場合、あらゆる鍵を開錠する事が出来る。


失敗した場合は、周囲のNPC、プレイヤーに気付かれてしまう。


レベルが上がると、成功確率と開ける事の出来る鍵が増えていく。


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この2つは本当に予想通りというか何というか……試すのが凄く楽しみだ。


MPは消費しないからやり放題ってわけだ。


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≪スキル説明:潜伏≫


モンスター、NPC、プレイヤー等から認知されにくくなる。


レベルが上がるとより認知されにくくなる。


□□□□□□□□□□□□□


うん、シンプルでいいな君は。気に入った。


プレイヤーからも認知されにくくなるって、一体どういう仕組み何だろうな。



「……漆黒さん!私、いつでもオッケーです!」



俺がスキル画面をじっくり見ていると、準備万端といった表情で言うカオリ。



「おう、んじゃ……お前はどう動くのが良いと思う?」



カオリなりに考えた作戦を、俺は単純に聞いてみたかった。


自分以外の考えはかなり重要だからな。



「わ、私は……えっと、『潜伏』に『不意打ち』と『抜撃術』、『気絶攻撃』があります。だから……」



カオリが口を開くと、つらつらと出てくるスキルの名前。


やっぱり結構スキル増えてたんだな。


「前の狩りと同じ感じで、漆黒さんが敵の注目を集中、私が近づいてドーンって感じですかね?」


「ふむ、なるほどな」


カオリの意見は全うに聞こえるが、相手はプレイヤーだ。


ヘイト値など当然ないプレイヤーは、迫るカオリに直ぐに気付く可能性がある。


潜伏といえども、認知されにくくなるってだけだからな。


「……相手はモンスターじゃない、当たり前だがヒトだ」


ほんとに当たり前の事言ってるな、俺。


「そう、ですね」


「例えば……よっぽどイカれてない限り、自分より図体のデカい奴が突進して来たら怖いだろ」



これはVRMMO、リアルにかなり近いんだ。


恐怖という感情は、対人戦でかなり使えるだろう。


ほんの一瞬でいい、相手の動きが遅れたらこっちのもんだ。



「だから――攻撃は、二人同時で行う」


「二人、ですか?」


「ああ。そうだな……まずお互い離れて潜伏するんだ。そしてタイミングを見計らい俺が先に出る。相手が俺に気付いたと同時にカオリも出る。全力で走ってな。不意打ちなんて考えなくていい。威圧しろ、怖がらせろ。『私はあなたをヤる気です』ってな」


言っててあれだが、中々アレだな。女の子に言う事じゃないな。


「わ、私にそんな事出来るでしょうか?」


カオリは不安そうにそんな事を言う。


まあ一応女の子?だし。


「お前は声は可愛いからな……叫ぶのは止した方がいい。まあ黙ったまま走って近付いて来たら十分怖いぞ」


俺なら逃げるな、こんなのが近づいてきたら。


「へへ……可愛いだなんて、そんなあ……」


見上げる程の鎧の巨体をくねくねするカオリ。まあ大丈夫だろう。



……だよね?




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