『初めての仲間と、悪への道』編
出会い
《始まりの町でログインしました!》
《スノウ様からフレンド登録の申し込みが来ています!》
インすると同時に、聞こえてくるインフォ。
スノウってのは六花だろう。えー、承認と。
《スノウ様がフレンドになりました!》
メニューからフレンド欄を見ると、居場所とレベル、職まで載っている。
えっと……レベルは11、場所は始まりの町、職は……サモナー?
さすが立花、自称ヘビーゲーマーなだけある。かなり進んでるな。
俺も負けてられないな。多分無理だけど。
とりあえずちゃんとした職に就きたいです、はい。
妹のサモナーは、名前の通り召喚獣と共に戦闘を行う職だろう。
俺はどうしようか、このゲームにも盗賊があればいいんだが。
俺毎回メインキャラは盗賊だったし。
……もちろん、ステータスを生かせるのが盗賊しかないってのもあるんだけども。
よし!とりあえずレベル10目指すぞ!
―――――――――――
始まりの草原にて。
人が多いため、狩場を少し進む。
まあまだサービス開始、2日だしな……このレベル帯が多いのはしょうがないか。
〈スライムlevel8〉
うん、この辺りはまだ少ないな。
さて……狩ろう。
―――――――――――
《レベルが上がりました!任意のステータスにポイントを振ってください》
上がりました。
敏捷に振って、また狩りに戻る。
……ん?なんだあれ?
向こうを見ると、三人が一人に追われているようだ。
こっちに近付いてくる。
PKか?それにしてはそんな風に見えないな……
「ま、まってくださいよー!お願いします!PTにいれてくださいい!」
追いかけてるプレイヤーが、追われている3人に呼びかけているように見える。
「く、来るんじゃねー!」
「お願いだ、他を当たってくれ!」
何故か俺の方に逃げてくる三人。
三人が俺の横を抜け、遠くへ逃げていく。
そして、近付いてくる追っている人物を見たとき、唖然とした。
筋肉が余すところなく付いており、その腕は極太。屈強なその肉体の上には、その肉体に見合った、歴戦の兵士のような男前な顔。
それが、女子高生のような声を出しながらこっちへ近付いてくるのだ。
「はあ、はあ……」
俺の目の前で、かがみこむ、その男?。
おかしいな、このゲームネカマは無理だと思ってたんだが……。
逆はいけたり?
「あの、私とPT、組んでくださいませんか?」
ふと立ち上がると、俺を見ながらそういい、近付いてくるのだ。
ウゴケナイ。
蛇に睨まれた蛙とはまさにこのこと。
俺は、蛙になりました。
――――――――――――――
「あの……PT……」
「あ、ああ……いいよ。組もう」
「やったー!有難うございます!」
まあ強そうだし、いいか。ここ辺りは割り切らないとな。
パーっと明るい笑顔になる。顔歴戦のオッサンだけど……。
「えっとPT申請で……名前は……」
「か、カオリです」
カオリ、ね。
「は?」
心の底からの声だった。
俺、こんな声出たんだな。
「……え?カオリですよ、か、お、り。カタカナで。カ、オ――」
俺の声帯の広さに感心する暇もなく、カオリとやらはまた口を開く。
どうやらこのオッサンは、本当にこんな名らしい。
上に表示されてる名前は確かにそう映っていた。
「――あー!分かったって!んじゃーフレンドフレンドっと……」
メニューからフレンド、フレンド申請を開く。
カオリ、ね……
「あは、やったー!初めてのフレンドです!」
可愛らしくそう喜ぶカオリ。
なんか、オッサンと女の声のギャップも慣れてきたな。
「んじゃ、PT送るぞ」
「はい!」
ピコン
「んじゃよろしくな、カオリ。狩りは今までソロでやってきたんだよな?」
「はい、もちろんです。私はまだレベル8ですけど……」
俺も8なんだけど……ま、まあいいか。
今『運命』とかそんな言葉が俺の頭を過ったが、気のせいだろう。だよな。
「き、奇遇だな……俺も8なんだよ」
こう言った途端、カオリは顔を輝かせる。
「へえー!私達運命の出会いかもしれませんね!ははは!」
……本当に、コイツは……
「とりあえずここ辺りのやつらからやるか、準備はできてんのか?」
「……え、ここレベル8のモンスターがうようよしてるんですよ?大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫大丈夫。お前が壁になってくれれば余裕だろ」
そのガタイなら当然、タンクだろう。
「……へ?私、魔法使いなんですけど……大丈夫ですか?」
……ああ、分かった、分かったさ。
一応声だけは『女の子』だしな。
この見た目で魔法使ってるとこ、想像できないけどな!
「大丈夫だ、お前は何でもいいから敵を引き付けとけ」
そうだ、君はタンクだ。
魔法使いとか関係なし!
「りょ、りょうかいしました!」
良い返事だ。さてさて……
「それじゃ、行くぞ!」
「は、はいい!」
その辺にいるモンスターに石を投げる。
〈ブルースライムlevel8〉
うん、こんなとこだろうな。
「よし、行け!」
「わかりりました!」
噛んでる噛んでる、大丈夫か?
「ファイヤーボール!」
素手のまま詠唱するカオリ。
魔方陣の完成速度は、ステータスの知力値によって速くなる。
先程戦った魔法使いが、俺より明らかに魔方陣展開速度が早かったからな……
カオリも当然魔法使いのステータスであれば、ファイヤーボール程度の魔方陣はすぐに完成――
「……!」
うん。
何か、カオリさん凄い頑張ってるのは分かるんだけどさ。
「……もうちょっと!」
全然魔方陣完成してないよ?というか俺より遅い!
「っ!」
やっと完成し、火の玉が飛んでいく。
玉のサイズちっさ!
その火の玉は、ひょろひょろと飛んでいき、ブルースライムに到達する前に消えてしまった。
「………………」
長い沈黙。
「……あ、あはは」
とりあえず突っ込みは後だ……
疾走スキルを使い、猛スピードで接近する。
そのままナイフで一刺しを行い、追加でキック。
反撃を避け、ナイフでヒットアンドアウェイ戦法を続けていたら、スライムは倒れた。
「さて」
「は、はい……」
うん、俺もそんな怒るわけじゃないんだから。
「とりあえず、君のステータス値を教えてくれるかな?」
「……」
黙り込むカオリ。
「うん?」
「……筋力値にしか、振ったこと無いです」
……
うん、カオリさん一応魔法使いだよな?
「分かってます!でも、筋力値を上げないと筋肉が付かないんです!仕方ないんです!」
俺が疑問の顔をしていると、そう必死に言うカオリ。
「……そ、その」
「ふっ、まじかよ、はは」
笑いが、止まらない。
「……そういうのもあるのか」
面白い、面白すぎる。今まで見たことないぞ、こんな変な奴は。
「……ど、どうしました?」
「気に入ったよ、お前の事」
「え、え?」
最初は何だよコイツとは思っていたが。
「改めて、よろしくな、カオリ」
俺は、カオリに右手を差し出す。
「え、は、はい!よろしくお願いします!」
ゴツゴツした、筋肉質の大きな手が俺の手を握り込んだ。
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