📕だっちゃんのお土産

 もちろんちゃんと予約している。

 店によって特典が違うので、店毎に予約している。どうせ予備やら何やらで八冊買うのだから全く問題は無い。


「……っ!!」


 それでも。

 この一冊は尊い。

 否。他のどんな本よりもこの一冊は尊い。


『新刊届いたから宇佐美くんにもー🐾』


 有難いメッセージと共に手渡されたこの一冊。発売前に作者さま手ずから。もちろん手形サイン付き。尊すぎる!


 宇佐美はじいぃぃぃんと胸を震わせる感動を噛み締めながら頂いたばかりの文庫本を開いた。当の獺祭だっちゃん魔法少女黄桜ちゃんの胸に抱かれてご満悦の様子だ。早速拝読するとしよう。



   🔯



「……ぶっ」


 宇佐美はちゃんとしている。

 大体どんなときでも冷静な無表情で感情を顕にすることが殆ど無い。

 DA☆TSU先生の作品を拝読すると心のなかは結構な大騒ぎになるのだが、それを表に出したりはしない。宇佐美は夏目漱石を読んでいる、と森伊蔵さんが誤解していたのも仕方の無い話なのだ。


 新刊のサブタイトルは『ゆきはの初恋』。魔法少女のお友達、ゆきはちゃんが突然の恋に落ちるというものだ。

 でも、このゆきはちゃんって……。


 宇佐美はちらりと隣を見た。それから、平場で黄桜ちゃんに抱かれるだっちゃんに目を向ける。宇佐美の視線に気づいただっちゃんが、森伊蔵さんをチラッと見てからグッと親指を立てた。


 ですよね!


 宇佐美はしっかりと頷き返した。


 でもヤバい。隣にネタ元がいたら、腹を抱えて笑ってしまう。


 これは、部屋でこっそり読むことにしよう。


 宇佐美は文庫本を閉じて、隣で顔を赤らめて月桂冠ちゃんを見下ろす伊蔵さんゆきはちゃんを観察することにしたのだった。

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