❤️宇佐美の告白

 宇佐美どのがソワソワしている。


 ちょっと首を傾げた森伊蔵さんは正面に掛かったポスターを見てぽんと手を打った。


獺祭だっちゃんが来たらまた店が華やぎますね」


 にっこり笑い掛けると、宇佐美の肩がぴくりと跳ねる。


「え、ええ。そうですね」


 歯切れが悪い。森伊蔵さんはまた首を傾げた。宇佐美は嬉しくないのだろうか。


「あの……伊蔵さん」


「はい?」


 宇佐美は何か言いたそうで。けれども開いた口をまた閉じる。ソワソワもじもじと、全くいつもの宇佐美らしくない。


「その……」


「はい」


 森伊蔵さんは辛抱強く待った。全くいつもの宇佐美らしくないが、何か言いたいことがあるのだ。あの宇佐美をして口ごもらせてしまうほどの重要な何かが。


「……本を」


「はい?」


 やっと意味のある単語が出てきたものの、ちょっとそれだけでは何のことやら分からない。宇佐美は少し頬を赤らめて額に汗を浮かせている。相当頑張っているらしい。

 頑張れ。森伊蔵さんはぐっと拳を握った。


「その……前にだっちゃんが来たときに」


「ああ!」


 消え入りそうな宇佐美の声に被せるように森伊蔵さんは膝を打った。


「申し訳ない!」


 胡座を掻いた膝に両手を突いて、森伊蔵さんは深々と頭を下げた。


 

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