✨チャラいぞ! 越乃寒梅くん

 越乃寒梅くんはチャラい。

 から。

 森伊蔵さんは越乃寒梅くんがちょっと嫌いだ。


 今日も今日とて越乃寒梅くんはチャラチャラと誰かに絡む。森伊蔵さんは今日もそれを温ーい目で見守っている。

 一体あの男の頭のなかはどうなっているというのか。お花でも詰まってるんじゃないのか? と。呆れ顔だ。


「あれえ。伊蔵さんどうしたの? 何か元気なくない?」


 鬱陶しい越乃寒梅くんに覗き込まれて、森伊蔵さんは顔を顰めた。


「なくない」


 つんと素っ気なく応えても越乃寒梅くんは怯まない。寧ろますます絡んでくる。


「いや。やっぱりおかしいね!」


 じっと見つめられて森伊蔵さんは目を逸らした。そしてうっかり、季の美さんと月桂冠ちゃんをチラ見してしまう。

 ピン! と、越乃寒梅くんの豆電球が光るのも無理からぬことだった。


「よっし。任せて!」


 ばしばしと肩を叩かれて森伊蔵さんは焦る。越乃寒梅くんは野放しにしたら何をするか分からない。案の定。


「おーい。月桂冠ちゃーん」


「まっ……」


 森伊蔵さんが止める間もなく、ひらひらと手を振りながら平場に下りてしまった。

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