🍶だっちゃんと宇佐美どの🍶

 獺祭(だっちゃん)は獺なので喋ることが出来ない。指の短い可愛らしい手では鉛筆を握ることは出来ない。出来ないけれど、だっちゃんはスペシャルな獺なのだ。

 声帯の都合で喋れなくても言葉は理解しているし、鉛筆を握れなくても今はタブレットがあるのである。ぽちぽちやれば字が書ける。

 だっちゃんは人気作家だ。


 けれどその事実を知る者は少ない。

 知っているのは相当コアなファン。

 何を隠そう宇佐美は、だっちゃんがウェブサイトの片隅で鳴かず飛ばずだった頃からの熱烈な追っかけだ。正体すら明かされていない人気作家にサイン(肉球)を貰えるくらい。


 今回もだっちゃんはサイン入りの新刊を宇佐美の為に用意してくれていた。

 宇佐美の本棚には、既に十回読み返して展開どころか小さな台詞の一つまで覚えてしまった同じ本が鎮座している。その隣には予備の一冊。永久保存用にもう一冊。そして布教用に五冊。合計八冊がきれいに並べられている。今日一冊貰って九冊になったからちょっと数字が悪い。後でもう一冊買ってこよう、と。宇佐美は思っている。

 そして、せっかく作者様(だっちゃん)が下さったのだから読まねばならぬ。読まぬ訳がない! と、十一回目の魔法少女(きゅるるん)を堪能していた。そうしたら!


 作者様が魔法少女にーーーー!!!


 その興奮が解るだろうか?

 宇佐美の感動が皆さまに伝わるだろうか?


 宇佐美はちょっと迷った末に、読みかけの本をその場に置いて(だって本棚に仕舞いに行く隙(ひま)は無い)一番のビューポイントにダッシュした。そして、とても神々しいので正座して拝見している。

 宇佐美に気づいただっちゃんが、こっそりと親指を立てた。宇佐美はそれを見てうんうんと頷いている。


 今まで慎重にリアルバレを避けていたのにバッチリ森伊蔵さんに見つかっちゃった!

 という事実を。

 二人はまだ知らない。


 

 

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