🍶獺祭のだっちゃん

 獺祭(だっちゃん)は期間限定でやって来る。

 それだから、というばかりではないのだが、大層な人気者だ。ご指名が多いのはもちろん、棚に並んだ面々もだっちゃんが来るのを楽しみにしている。


 だっちゃんはそれはそれは可愛らしいコツメカワウソだ。

 擬人化が前提なのに何てこと! とか言ってはいけない。だって、だっちゃんは獺(かわうそ)以外に考えられない。獺が浮かんだらもうその愛らしさからは逃れられない。仕方がないのである。


 さて。だっちゃんは大人気だ。やって来ると忽(たちま)ち皆に囲まれる。

 可愛い可愛いと言われて。すりすりと撫でられて。だっちゃんはご満悦だ。つぶらな瞳をきゅるん、と瞬かせて皆を見上げる。


「やーん。かわいいー」


 大切なキューちゃんを森伊蔵さんにぽんと預けて黄桜ちゃんがだっちゃんを抱き上げた。頬擦りされてきゅっきゅと嬉しそうな鳴き声を上げるだっちゃん。ますます可愛い。


 月桂冠ちゃんの可愛さは格別だが、だっちゃんもなかなか可愛いもんだな。と森伊蔵さんは思う。預けられたカッパを抱きしめて、少ぉし眦を下げる。


「私にも抱っこさせてー❤」


 月桂冠ちゃんが黄桜ちゃんに両手を差し出した。きゅうっ、と可愛い声を上げてだっちゃんが月桂冠ちゃんの腕のなかに収まる。嬉しそうに微笑んで月桂冠ちゃんがだっちゃんに頬を寄せる。


 ぶっっ。


 その可愛さはもはや凶器だ。

 頭に血が上(のぼ)って黄桜ちゃんの大事なキューちゃんを汚してしまった森伊蔵さんは、後でこってり絞られることになるのだが……

 今は幸せな夢のなか、なのだった。

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