🍶デート?

 森伊蔵さんは緊張している。

 月桂冠ちゃんは困っている。


 何の因果か二人並んで平場に置かれているのだ。


 森伊蔵さんはドキドキしている。


 そんなに熱くなったらせっかくの風味が台無しになってしまうのではないか。棚の上から宇佐美は顔を顰めるが、森伊蔵さんにそんなことを考慮する余裕などない。


 愛しいあの子に手が届きそうなのだ。


 ちょっと手を伸ばして触れてみるべきなのか。

 それともここは黙して動かぬ方が好いのか。


 森伊蔵さんは悩んでいる。


 そして、そんな葛藤がダダ漏れなので。

 隣に座る月桂冠ちゃんもとてもとても困っているのだ。


 ああ。

 もういっそ、熱烈に迫ってくれないかな。

 そうしたら「ごめんなさい」も出来るのに。


 月桂冠ちゃんはふうとため息を吐いた。


 びくぅっ、と。


 森伊蔵さんがキョドる。

 仕方がないから愛想笑いをしてみた。


 ぱあっと。森伊蔵さんの表情が緩む。


 なるほど。


 月桂冠ちゃんは昨日の黄桜ちゃんの言葉を思い出していた。


 これは確かにちょっと、可愛いかもしれない。

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