その二十一 スペシャルイベント?
「キョウ!」
沙羅が叫びながら駆け寄ってくる。
「……光の聖獣王グリフォン。どうして……?」
沙羅はだいぶ手前で立ち止まった。そこに梓と小次郎も走って合流した。良かった。小次郎も無事なようだ。僕はそう思った。
「マスター、アレハ、テキカ、ミカタカ? テキナラクッテイイカ」
「味方だよ! 食べないで!」
「なに喚いているの? キョウ。何を食べるって?」
と沙羅。その時、グリフォンが掴んでいる怪鳥の体に気付いたようだ。
「ハーピーね。それはあなたを襲った怪物。味方じゃないわよ」
「?」
僕は、グリフォンの声が沙羅たちに聞こえていない事に気付いた。
「マスター、ヒカリノハドウトトモニ」
グリフォンは、そう言って、風を巻き起こし飛び去った。
「良かった無事で!」
沙羅は、僕に抱き付いた。
「わたし、あなたに何かあったら、もう……」
「拙者、一生の不覚。キョウ殿を助け、スペシャルイベントが発生するところだったものを、無念でござる」
と小次郎。何を期待されていたのか考えたくもないけど、そんなイベント絶対無いからね。心配して損したと僕は思った。
「安心したわ。ヴァーチャルキョウの設定が変わるんじゃないかって、心配したもの」
あくまで、ヴァーチャル優先ですか。梓さん。
「ふむふむ、あれから色々あったんですね。特にキョウちゃん大変だったのね。怖かったでしょ」
そこは町の喫茶店。メイド服の店員さんは、沙羅の話を聞き終わると、ハートの模様を描いたカプチーノのおかわりを洒落た仕草でテーブルに置いた。彼女の名前は、マリアンヌ、通称アンヌ。柔らかそうなブルネットをボブカットにした笑顔の可愛いお姉さんだ。
「それで、この子は、ケルピーだったのね」
とアンヌ。
「そう。村からついて来ちゃったのよね。キョウから離れようとしないの」
と沙羅は、頬づえを突いてさも不満そうな顔。
ケルピーの少女は、ショートケーキを手で掴んで頬張っている。口の周りに生クリームをいっぱいつけたまま、目を丸くして嬉しそう。
レイと名付けたその子は、裸のままでは困ると言う沙羅に上半身だけ無理矢理服を着せられていた。麻色の長い髪は僕が三つ編みにしてやった。下半身が仔馬の体で座ることは出来ないので、テーブルの横に立ったまま。
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