その十三 これって、ハーレム?
「キョウちゃん、ルゥの顔に何か付いてますか?」
村おさから提供してもらった僕たちの部屋は、僕が元いた世界の旅館の一室に良く似ている。座布団も浴衣もあるし、寝具も布団そのもの。八畳ほどの一間に沙羅と梓と僕とルゥちゃんが寝ることになった。もちろん、小次郎は別室に隔離してもらった。
歌姫の忠告を受けて以来、ルゥちゃんの視線が気になって仕方ない。その反面、ルゥちゃんがそばにいる限り歌姫に襲われる心配も無いように思えた。
「いや、その……。可愛いメイド服だなって……。ルゥちゃんは浴衣に着替えないの?」
「職務中ですので」
と、ルゥはすまし顔。座布団の上にシーツを広げて、自分用の寝床を作っている。
使い魔っていうから、魔妖石とか魔法のランプみたいな物の中に入って寝るのかと思ってたけど、違うんだ。わりと現実的だと、僕は思った。
「なに、なに? キョウって、意外にメイド服マニアだったりする? 今度、ヴァーチャルキョウの設定に追加しようかな」
湯上りの浴衣姿の梓が前かがみで話に割り込んできた。こうして見ると、彼女も案外胸がある。バストの隙間もしっかり見えている。少年みたいな体形だと思っていたけど、僕の今の体に比べるとずっと女の子らしい。当たり前だよね。
「キョウ、なにそのぼさぼさ頭。綺麗な髪が台無しよ。梳いてあげるからいらっしゃい。ほんと毎日世話焼かせるんだから」
と布団の上に座って手招きする沙羅は、浴衣を着てもさすがのボンキュッボンのお姉さま姿。出ているとこ出てます。長い黒髪はポニーテールに束ねている。
「あーっ! 生キョウのブラッシング。私にもやらせて!」
と駆け寄る梓。また、おもちゃにされてしまう僕。
少女二人と一匹? に囲まれて、まるでハーレムのような生活。いや、違う。微妙に違う。僕は、今、女の子の生活を垣間見ているだけ。部屋の鏡台に映る僕の姿は、湯上りの栗色の長い髪を面白半分にいじられている美少女。人畜無害のお人形さんのようなこの姿だから許される生活。
歌姫の助言通りなら、僕はこのまま女の子になり、今の生活を続けるべきらしい。でも、僕、確かに男だったんだ。あの世界では。そして、今でも男になれるらしいが、実は、その方法は分からない。セイナも、そんなことまでは知らないと言っていた。自分のことだから、自分が一番良く知っていようと。
自分のことが一番分かってないから困ってるんだけど……。方法が分かったとしても、男になって、あのダングレアのような怪物になるなんて絶対ごめんだ。僕の中に流れている妖魔の血って何なの?
正直なところ、突然で突拍子もない事態が多過ぎて、今は、まだ、今後のことまで考える余裕がない。ほんと、僕、どうしたらいいの?
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