その十二 妖精体変幻
「え? 決めるって? 男と女? それって、自分で選ぶものなの?」
この世界でも、性転換手術とかあるのだろうか。もちろん、僕、そんな気、皆無だけど。頭が混乱してきて何がなんだか。
「自分のことじゃろ。そなた、ジャイルマ生まれであろう。しかも、妖魔の血を引いておるの。見たところ半妖か」
確か、魔人も、僕を“はんよう”だと……、それって、どういう意味?
「その、
「え?」
「なんじゃ。知らなかった割には、大して驚かぬの。つまらん」
「いや、驚くもなにも、そんな突拍子もない事、いきなり言われても……、つまり、僕って、男じゃないの? 女でもないって、えええ? 僕って、何者? 妖精? 人間じゃないの?」
「今のところ人間には違いない。今のところはの」
なに? その意味深な言い方。悪い予感しかしないんですけど。
「強いて言えば、中性かの。幸い、まだ両性具有にはなっておらぬ。そなたのような年頃になるまでには自ずとどちらかの性を選ぶべきなのじゃ」
「そ、それって、この世界では常識? みんなそうなの?」
「そんなはずはなかろう。人間の妖精体は極めて稀なケースじゃ。そして、特殊な力を持っておっての。見る者の心を魅惑するのじゃ。だから、
「魅惑するって……」
「魅了であったり、幻惑であったりすると聞く。詐欺師紛いの者もおるらしい。一つだけ言っておくぞ。
これまで通り少女として振る舞い、あの者たちには妖精体の事はくれぐれも秘密にしておれ。そして、出来るだけ早く、男か、女、どちらかを選ぶがよい。残された時間は少ないと思え。
セイナは、言葉を区切った。彼女の顔から謎めいた笑顔が消えた。
「流れている妖魔の血とその濃さによるが、男になると、妖魔の特徴が発現し、あのダングレアのような化け物になる可能性がある。ダングレアも遠い昔、妖精体じゃったそうな」
「へ? えええええええええ!」
「妖艶な美少年だったと言い伝えられておる。魔王の呪いで魔人にされたと一般には信じられておるが、実のところは妖精体変幻よ」
つまり、どういうこと? 僕もあの魔人みたいになるってこと? 可能性? いや、マジで無理なんですけど。そんなこと……。あいつが沙羅に恐喝されていた時、微妙に同情したい気になったのはそのせい? いやだ! 絶対いやだ! あんな怪物になるなんて。
「危険な犬耳使い魔もおるから。用心せよ。妖精体だとバレたが最後。魔王軍に通報され、散々な辱めを受けよう」
「ルゥちゃんが……? 辱めって、まさか……」
「もちろん、
そこで、急にセイナの目にトロンとした表情が浮かんだ。顔が近すぎる。
「も、もう一度、触らせてくれぬかの。そなたの、可愛いらしい物を……。一度触るも、二度触るも同じであろう。減るものでもあるまい」
いや、減るかもしれない。もう、何も信じられない! こんな世界。僕は、吐息が荒くなったセイナを見ながら、また危険人物が一人増えたことを確信した。
「これ。そんなに恥ずかしがるでない。
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