その十一 ばれた?
「ねえ、私も分け前もらえるのよね。ヴァーチャルキョウのバージョンアップにお金が必要なの」
「だから、そのヴァーチャルキョウって、何なの? 三ヶ日」
「仕方ないから、神無月にだけ少し試用させてあげる」
梓は、町から抱えてきた荷物の中から、ごそごそとボディスーツのような物を取り出した。
「何それ? 三ヶ日。あんた随分大きな荷物だと思ってたけど、中身そんなガラクタだったの」
「まあまあ、旦那、まずはこれを」
三ヶ日は、沙羅にVRヘッドセットのような器具を装着させた。
「おおっ! これは! っごい!」
「ね♪ さらに、ボディスーツを装着すると」
「うんうん。これはいい! いけるわ」
「今度、ビチョビチョのトロッとろ機能を追加しようと思って。どう?」
「うんうん、わかる。三ヶ日。あんた天才かも」
何やってんですか? 少女二人の騒ぎを呆れて見ている僕を、部屋のドアから覗く歌姫が、例の謎の眼差しで招いた。
「こたびの働き、ご苦労じゃったの」
歌姫は、僕を別室に呼びこんで、後ろ手にドアをぴったりと閉めた。隙の無いその動作に、僕は少し悪い予感を覚えた。
「ええ、でも、僕、座ってたばかりで、歌姫さんの……」
「セイナじゃ」
歌姫は、僕の片手を握った。
「謙遜とは、また、殊勝な。
そう言いながら、セイナは、僕の手をぐいっと引き寄せたかと思うと、いきなりスカートの中に右手を突っ込んで僕の股間をつかんだ。一瞬の早業だった。
「な……!」
僕は、とっさに飛びのいた。ばれた? ばれたよね? どうして? 僕の顔から血の気が引いた。
「やはりの」
慌てた僕の顔を見て、セイナはにっこりと笑った。
「付いている物も可愛いらしいの。そなた」
そう言って目を細めるセイナの前で、僕は蛇に睨まれたカエルのようになった。
「ぼ、僕、別に隠してたわけじゃなくて……。ただ、みんなが、僕を女だと信じて疑わないものだから、ついそのまま……」
セイナの前で、慌てる僕。男だと、沙羅にバレたら、僕、殺されるかも。いや間違いなく殺される。一緒のベッドで寝てたし……。でも、僕、嘘は言ってないからね。みんな面白がって、僕に女の子の服を着せてただけで……
「何をぶつぶつ言っておるのじゃ。初めてそなたを見た時から、
セイナは、上目づかいにクスクスと笑った。
「そなた、男になるのか、女になるのか、まだ決めておらぬのか?」
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