花言葉

翌日深山の指示によって昨日集まった英雄、春江たちと礼二、深山、護。そして弁護士の財津が高木邸に再び集まった。


「おじさん、なんだよまた集まれって。もう決まったことじゃないか?」

「黙れ。」と礼二はにらんだ。

「ここにまたお集まりいただきありがとうございます」

と深山は口を切った。

「今回集まっていただいたのは高木吾郎さんの本当の遺言をお伝えするためです」


「本当の遺言?」

「それは本当の話でしょうか?」財津は眼を鋭くした。

「ええ、アジサイの花言葉って皆さんご存知ですか?移り気というらしいです。

でも色によって意味が違うそうです。私は目が見えませんからわかりませんが赤いアジサイは元気な女性、白いアジサイは謙虚というそうです。

ここの庭にもアジサイが咲いてますよね。でも一か所だけ違う色のアジサイの塊が見えませんか?」

「あ、」皆目線を庭にやると確かに青いアジサイの群れがある。

「アジサイが色が変わるのは種類が違うからではなく土が酸性かアルカリ性かで変わります。青い花が咲くのはアルカリ性だからです。」

「つまり、その場所に金属の何かが埋められています。」

そういうと英雄と春江は庭に出ようとしたが

「お待ちください」と弁護士に制止された。

「仮に遺言書が埋まっているとして勝手に開けることは罪になります」

と財津は二人をにらみつけた。


しばらくしてアジサイのを掘り下げると金庫が出てきた。

大きなものでカギは刺さっていたがダイヤルの数字がわからなかった。「だめだ。ダイヤルにロックがかかってる。

「弘文さんの亡くなられた日はいつですか?」深山はいった。「たしか6月15日です」

「では弁護士さん「0615」と回してください」

財津が数字を入れてしばらくして「カチっ」と音がした。

財津がゆっくりと扉を開けると中から土地の権利書や有価証券、そして「遺言書」と書かれた紙が出てきた。


遺言書を財津が持って部屋に戻る。

あらためて封を切る。

「遺言書 私高木吾郎の財産のうち土地234-4は高木礼二に、234-6は日高護に・・・・・・・」

そこには商店街の土地を各店主に譲る旨が書かれていた。

最後に英雄と春江にも僅かばかりではあるが書かれていた。


「なんだ、よかったな。じゃあ、俺たちは。。。」と英雄たちは立ち去ろうとするが「お待ちください」と大高は声を張った。

「先日の遺言書が作られた公証役場に私行ってまいりました。」

「えっ」二人は息をのむ。

「公証役場の方が証言なさってくださいました。旦那様ではない男性が旦那様の名前を語ったそうですね」

大高の発言に

「そうしますとお二人とも相続欠格となり相続権はなくなります」

二人はその場に倒れた。


「高木吾郎さんって方は幸せだったのでしょうか?」深山は考え込んだ。

「ところで青いアジサイの花言葉はなんですか?」護は聞いた。

「無情、高慢。。。。そして「辛抱強い愛情」です」


梅雨の雨は弱まっていき光が大地にそそぐその風景を皆見つめていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

金庫は静かに眠る。 若狭屋 真夏(九代目) @wakasaya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る