第7話 エピローグ

 生まれて初めてではないだろうか。私がこんなにも注目を集めているのは。おしよせる人。その人たちの手にはカメラやビデオカメラが握られている。夜中というにも関わらず、昼のような明るさでフラッシュがたかれている。


 あれから普通の男は警察へと通報し、202号室からは好青年の死体が持ち去られることになった。私は安堵した。あのまま腐敗がすすめば、いくらなんでも気持ち悪すぎであったからである。

 

 そして、クズが警察に逮捕されたことは私を一番喜ばせた。そのおかげでいろいろな事が好転したように思う。


 102号室で裸にされ、監禁されていた女性が元の部屋に帰れたことや普通の男が私と同じように取材で注目を浴びるようになったことである。


 普通の男はインタビュアーに「まさか、隣でこんなことが起こっていたなんて予想もしていませんでしたよ」という普通の受け答えで応じていた。

 

 さらに付け加えるなら、101号室の男も私に対して優しくなった。私につけた小さくて長い傷を即座に修繕してくれたのだ。警察が来るよりも早い迅速な対応と言ってもいいだろう。それに、これ依頼気持ちのわるい行動を全くしなくなったのだ。つまりは私は無抵抗に中出しされることがなくなったのだ。


 ただ良かったことばかりというわけではない。老婆が前にもまして元気をなくしてしまったようなのである。私は老婆のために何かしたいとは思うが、私には人間の細かな機微を察する事はできない。できることと言えば、鍵のかかっていない扉を開けることくらいであろうか。


 私は住人達をただ見守っていることくらいしかできないのである……


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

メゾン・ローズ かぐや @kaguya1111

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ