詩？

ゲーミングチェア

云いたいことがない

そろばん塾には行かない

体育倉庫に棲む

友だちを喚んだりも

しない

だまってみていてあげるから

そつなくやってのけるがいい

本を読んだり

背伸びをしたり

カップを割ったり

影と話したり

ひとりでに共倒れて

はにかんだり

大人になったばかりの白い部屋

む、

か、

し、

は　……

過去ではなく

未来でもない陣地で

脳髄に凍える煮凝り

む、

か、

し、

は　……

間口はくるしく

湾曲していて

ぐねぐねうねって

苦心して闖入すれば

ひろびろとくつろげるし

腥い

春のそばかす

夏の泡立ち

ゲーミングチェアに鎮められた

ダッチワイフがくつろいでいる

窓の内に縋る落ち葉

だれかに

だれかの訣れを凭せた風速

わかってしまった

歳古る日々は

秘密が

笑顔が

転んだふりが

発達していく進化論

おおきな西陽がゆっくりと

初霜になって降りそそぐ

懐かしい匂いを分娩して

腸骨が

ひとりでに温もりだす

眼がみえなくなってきた