日曜日の午後

ワンルームのフローリングに

ビスで固定されている

安らかな母の


膨らんだ腹をふさぐ

蛭をこれから

かき出さなくてはいけない


蛭である俺をかき出して

母の未通をなすことで

母を蘇生させなくてはいけない


クローゼットをあけると埃が

つぶした段ボールのすき間から

蛍光灯のオレンジに舞い上がる


細長いものに見当をつけて

引っぱり出した掃除機のパイプを

握りしめてふり向いて、気づく


顎から額を破壊された、この

懐かしい仰臥は本当に母か

かき出そうとしているのは本当に俺か


カーテンをあけると夕焼けの

オレンジに沈むミキサー車の

ヘッドライトがこちらを見ている


確証などなくとも

俺は今から

力をふるわなくてはいけない


固定された標本を

破壊しなくてはいけなかった

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