風船

喉を湯がく睦言の群れ

楕円の月が

吐いた血を浴びたとき

はだかでよかった

糊のきいた白襟が

汚れてしまわずにすんだから


もう動かない友だちがいるとして

友だちは

動かないものだけ

つま先で、継父ちちは夜のうちに

動けなくなって

別れの朝がくる


誤解と遠吠えで編まれた

水平線が

ゆるやかな焦点をむすぶけれど

木馬のように遠近の毀れた

湖畔に根をはる樹影を

あたためることはない


はだかにした風船が

とび去ってしまわぬよう

土をかぶせる

枝にシャツを吊るして

月がいないうちに眠った

地獄でないうちに眠りたかった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る