状況の小屋

色や形状や大きさは異なるが閉じ込められた

容積は同一であるいくつかの小屋を想起せよ

――たとえばひとつは火星と同じ直径で今ひ

とつは金平糖と同じ体積を持ち――あるいは

独裁者が政敵を軟禁するための冷凍庫と物乞

いが貝を割るための厠――それぞれに正義が

あるとは当世にはやりの文化的自慰だが正義

や虚偽や血液と同じく小屋たちはそれぞれに

実在し〈状況〉と呼ばれるこれもそのような

もののひとつであった――在ったと私は書い

たが在ることや在らぬことの確定はひとえに

小屋を観測する者の判断に拠ることは自明だ

――その者にとっての小屋の在る無し――そ

のような観点から小屋と小屋を観測する者と

の関係を顧慮するならつぎの定理が容易に推

察されうる――すなわち他の小屋が在ること

無いことは小屋の中からは判断できない――

というのも中からでは小屋を構成する上下左

右六面――それらは腐りかけて渋柿の匂いを

発する木板かもしれないし頬を寄せれば冷気

にびたりとひっつく鉄板であるかもしれない

――に阻まれ外部の観測が不可能だからであ

る――したがってそのような様態を持つ観測

者はさだめし小屋の外にいることになる――

どのような内部にも属さず状況を外から観測

する者――外?――外には何もない――水素

と窒素の充溢する真空の最中で観測者は元素

ではなく――したがって外に観測者など存在

しない――さてそのような小屋にとって小屋

それ自身はどのように看取されるのだろう?

――ひとつ確実にいえることはそのような小

屋の中からでは外だけでなく他の小屋の存在

も観測できないということである――内部に

在る者にとって何処まで往っても小屋は自身

が在るところのそれのみが小屋であり――い

ずこともなく名指され眼差されるはずのそれ

ぞれの小屋は孤立し――その内外を隔てる平

面どうしの組成によっていわばそれぞれが固

有名詞と化している――ところで冒頭に立ち

返ればそのようでしかない小屋たちのひとつ

であるここには〈状況〉なる語句が冠せられ

ており――間違っても〈無謬〉や〈法則〉や

〈真理〉ではなく――それは刻一刻と変じる

もの――少なくともそうであると想定される

ものを指すのだろう――ではそのような変遷

それ自体の観測はどのような手続きにより行

われるのか?――ここまで見てきたようにあ

らゆる小屋は自身の存在の他に自身を定立す

る根拠を持たない――つまり小屋自身の時間

的推移は自身への再帰的な検討――この時点

での様態とあの時点での様態の比較という自

己観察によってのみ実施されるものであるわ

けだ――しかしそのようなことは現実に可能

だろうか?――外部を持たない小屋の推移を

内部の観測者は観測しうるのだろうか?――

何と言っても観測者は存在論的に小屋の内部

に在るのでありそこから外部は観測できない

のである――となれば時間の構成は銅鐸の鋳

造やト占といった偉大なる先人の知恵ではな

くひとえに観測者の直覚による判断にかかる

ものとなるが――そのような直覚を判断にお

いて行使するか否かもまた別種の判断にさら

されるものであって――つまり問題は直覚の

麻痺あるいは去勢であってさらに問題なのは

そのような去勢としての理性を諸君が望んで

行使していることだ――それも理性の行使こ

そは忌まわしくも唾棄すべき正義だとたがい

の耳元に囁き合いながら――少なくとも私に

はそのように観測される――脳幹への麻酔銃

を――陽物をバターのように掬い取るナイフ

を諸君は商人から購おうとしている――何た

る誉れであり頽廃であり勇猛なる恥辱である

ことか――時間を嬰児のように破棄するつも

りか?――あるいは公文書のように?――よ

かろう――だが真空に肥え虚無を謳歌する者

どもよ――聴け――

.+  ゚ .+そ   .゚.゚。+  ゚

 ゚ 。. +゚ 。゚.゚。☆*。 ゚ 。. +゚ 。゚.゚。☆*。

。 . 。 o .。゚。.o。*  ん 。 .。.゚o。*。.☆.

   。 .。.゚o。*。.☆.。. . . 。 ゚。☆゚.+。゚

。. . な. 。 ゚。☆゚.+。゚  ゚ 。 ゚.+。゚*。.。゚+

  ゚ 。 ゚.+。゚*。.。゚+。 . . 。゚.。*。.☆。.゚。+

。 . . 。゚.。*。.☆。.゚。+  . 。゚。.。こo☆+゚。*。.。

  . 。゚。.。o☆+゚。*。.。  . 。゚。.。o☆+゚。*。.。

 ゚ .゚。゚+。.と+。*。゚.+。 ゚ .゚。゚+。.+。*。゚.+。

+゚o。.゚*。゚☆+。゚.゚。.+゚o。.゚*。゚☆+。゚.゚。.

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  ___.i;;.i::::::::::::i/ ..: .',  /   知

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  _ノ\i_) i:::::::/   ...;;/ //

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  __.|;_i::/   ...;;/

  ___/  .....;;/    い

     .|;; i  ...;;イ

     ノ;; ,.‐ ;;-.;i  る

   /;;; /' ''   ;;;X

   |;;  ;i;;.. ~  ;;|    ?

   X~ ;i;;; ;;,. ;;;/

    ヽ;;__\_;;/    

――ご大層な大見得だが残念ながらこの厩は

諸君が思いがけない在りようで羈絆に罹患し

ているのだ――そう――外には誰もいない!

――諸君の陽物が逃げ込むべき〈性奴隷〉な

ど存在しない!――時間はなおも腐敗し続け

る――シーラカンスの陰処ほとのように青白く柔

く腥く――ああそして私もまた〈状況〉のけ

ちな端役であってつぶしのきかぬ浅知恵と老

衰を腰蓑のように引っ提げては諸君と朗らか

である――だが今まさに幕間にて打ち明けれ

ばこの哄笑のさざめきに舞台が圧潰し内部か

ら頽れて地虫の餌となる叙景こそは私が望む

ものであ■■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■祈■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■念■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■す■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■べ■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■き■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■碑■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■銘■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■を■■■■■■■■■■■■■■■

■■■■その蹄でぞんぶんに嬲るがよい.■

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