スタンドバイミー

ぼくらにはもう

わからない心で

ぼくらの知らない

朝焼けを見ている?


失われた海賊を追って

それでも帆をはるんだね

砂鉄をなぞる海原の果て

ジンチョウゲの森をめざして


終わりのない終わりをはじめる

うしろ姿を見送るたびに

胸が痛んだ

ことを思い出した

腹をすかせた点滴棒が

窓の三日月を引きさいた


濁りをおびていく愚かさを

もう赦せはしなかった

ドッグヤードに潮風がふいて

気のむくままにカビを生やした


通信機でのぞいてみた羽ばたき

かかともつけずに夕暮れに向かい

のぞかれたのはむしろこちらか

祈りと悪態にかられた夜か


これからも何もないと

知ってしまえば耐えられないと

知っていたから笑っていたの?

年老いる明日のぼくらはどう?

信号のあなたが知るはずないけど

ぼくらはあなたのことが好きだと


ほそく伸びわたる渚に立つ影

記念碑に刻まれた名前が

自由のためのはるかな骨が

波音にしかきこえない


そばにいたい

そばにいたいと

いつまでもそばに

いる獣など


いないことを

呪う朝を

ねがうよ


終わりのない終わりにおびえる

この島の大人たちは

口を噤んで

までなぜここにいる?

腹をすかせた病室の群れ

おとなしい子どもの顔で


これからも何を語ることなく

蜜はしたたるはずだと思うと

夏の嵐に青くうなずくだけ

だけど年老いた正義のために

ちゃちな信号はまだ鳴っている

その耳鳴りさえ届かなくても


脚をとめないで

帆をおろさないで

愚かであっても

そうでなくても


あなたのままでいても

いられなくても

どうか待たないで

この命にも迎えがくるなら


この命で迎えにいくから

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る