犬のように

なつかしい空洞を

青空の下に

みっつ

設えた

鼻っ面をつっ込んで

言葉をわすれるために


ところが

この鼻は柔く

犬のように立派ではなく

だから空洞になじまない

その輪郭が引きとめてくれない

こんなにも青くさい鼻しか

持てないなら

夕焼けを繙く紫しか

知るべきではなかった


それでも鳥のように

念入りに

かしこまり

一対の手首を曲げ

のこりの空洞

ふたつにさし入れると

たましいになじまない

肢体の両端から如才なく

青空を割る

電線として固定されたので

ようやく

一息つく心地であり


脚を肩幅にひらき

首を伸ばし

肛門をしめて

腕を伸ばし

手首は曲げたまま

こわばり

朝と夜をいつまでも

またいでゆき

電柱をつなぎ

電柱につながれ

雨風や地鳴りに撓んで

被膜をやぶる

春雷もなく

鳥が言葉もなく

相争って

脚をやすめて


たましいは犬 空洞は轡

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